episode.174 ページ22
◇貴方side
そうして、田中さんの手術は始まった。
何時間にも及ぶ大手術だったけど、何事もなく進んでいって無事成功。
正直しんどかったけど、田中さん家族の笑顔を見てさっきまでの疲れなんてどっかに吹っ飛んでしまって。
目覚めた本人の笑顔と感謝の言葉を貰って、
すごく嬉しくて、涙が溢れそうになっちゃって。
「じゃあ、また来ますね」
田中「先生ｯ……ほんとうに、ありがとうございましたｯ……」
病室を出ていった後、パパに休んできなと仮眠室に行くように言われて。
誰もいない仮眠室のベッドに横になった。
「……ｯ……ｯｯ……」
やったよ、私、成功させたよ。
お母さん、お父さん。
頑張ったよ。
「お母さんｯ……お父さんｯ……」
会いたくて、会いたくて、
でも、そんな願いは叶わないって自分がよく知ってるのに。
でも、心の中でずっと願ってしまう。
「ん、」
あれ、私、寝てたっけ。
ぼーっとする頭を動かしてると、ベッドの隅に誰かが座ってて。
赤井「ん？おはよう、honey」
「ん、あれ、」
赤井「お疲れ様」
あれ、なんでいるの？そんな事を考えてると頭を撫でてくれて。
赤井「君の父親に呼ばれたんだ。お疲れだから、迎えに来てくれって」
「仕事……」
赤井「丁度終わっていたんだ、気にするな。君ももう終わりだと言っていたし、そろそろ帰ろう」
「ん」
寝ぼけてる私を、抱き上げてくれた。
いつもなら恥ずかしいけれど、まぁいっか。
赤井さん、あったかい。
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作者名：ゆな
| 作成日時：2019年12月4日 19時
