episode.108 ページ6
◇貴方side
今日もまた、彼の病室に来た。
相変わらず眠ったまま。
「……寝坊助」
彼の手は、冷たい。
彼の暖かい手の筈なのに。
「ねぇ、早く起きてくださいよ」
あんなに、逃げてたくせに。
あんなに、私の心に嘘をついてたのに。
貴方がこんなことになってしまってから自分から会いに行くって、どんだけ馬鹿なんだろう。
うじうじしてたせいでこんなに後悔して。ほんとポンコツだ。
「ごめんなさい、こんな私で……」
コナン「Aさん」
「あ、コナン君」
コナン君が入ってきていたことに気づかなかった。
「……」
コナン「やっと、自分から来れたんだ」
「こんな私になんて、赤井さんに会う資格なんてないよ。なのに、足が動いちゃって……」
コナン「ほんとは、すごく会いたかったんだよね？」
「……うん」
そう、ずっと会いたかった。会いたくて、でも怖くて。
コナン「会う資格とかは関係ないと思うよ」
「……え」
コナン「ほんとは、怖くて会えなかったんでしょ？会っちゃったらどうなっちゃうか分からないって。
でも、人間誰しも怖いことってあるんだよ」
「……」
コナン「僕だって、怖いものはあるよ。でも、Aさんは怖くても会いに来れた」
「こんな状態のときに来るなんて、臆病者だよ」
コナン「Aさんは、臆病者じゃないと思うよ。
だって、明美さんの時や影光お兄さんの時だって、自分の命を顧みずに飛び込んでいった。そんな人が臆病者だなんて思えないよ」
「……買い被りすぎ」
コナン「ううん、Aさんは強い人だよ。僕は知ってる」
「……」
コナン「あ、それじゃあまた来るね。またね！」
「うん、気をつけて帰るんだよ」
コナン「うん。ありがと！」
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作者名：ゆな
| 作成日時：2019年11月18日 11時
