episode.35 ページ35
◇貴方side
松田「泥沼に足突っ込んだって何だよ、そんなの関係ねぇだろ。何気にしたんだ馬鹿」
「……今、私スパイしてるの。だから……」
松田「何だよ、巻き込みたくないってか？お前、俺のこと知らねぇのか、何年一緒にいると思ってるんだ」
「……」
松田「おい」
「この前、ハニトラしてきたよ？」
松田「酒で潰したんだろ」
うん、まぁ、そうだけど。
「そんな私、やでしょ」
松田「な訳ねぇだろ。仕事熱心で感心してるっつの」
「……ずるいな、陣平さん」
松田「知ってるだろ」
「うん、知ってる」
……はぁぁぁぁ、こりゃ無理だな。何か、馬鹿らしくなってきちゃった。
「陣平さん」
松田「なんだ」
ガシッと彼に抱きついて、こう言った。本当の、私の心の内。
「好き、大好き」
やっと言ったな、って上から聞こえてきた。なぁんだ、知ったたんだ。
「なんか、爆弾解除された気分」
松田「何だそれ」
「あはは」
何か、心が軽くなった気がする。
後悔しないために、自分に素直になる。
巻き込まないように、って思ってたけれど……なら自分が頑張ればいいだけじゃない。なぁんだ、簡単じゃん。
松田「とりあえず、風呂入れよ。ボロボロなんだし」
「服貸してください」
松田「お前ちいせぇからな、あっかな」
「どれでもいいんで」
松田「りょーかい」
もう着れれば何でもいいや。てか、貸していただく側なんだけどさ。
シャワーを浴びながら、ずっと考えてた。
こんなに、心が軽いのは久しぶりだ。
あの時の、陣平さんに見つかっちゃった時みたい。
でも、あの時とはちょっと違う気がする。
「本当のことを、言えたからかな」
なんだか、肩に乗ってたものも降ろせた気がした。
「ちょっと待ってよ、何これ」
脱衣所に戻ると、彼が用意してくれたのかタオルとトレーナー。
トレーナーを広げてみると、彼の物なのかデカい。デカすぎ。これ絶対ぶかぶかだって。
ズボンなんて履けないよ。落っこっちゃうって。
「…………上だけでいっか」
着てみたら膝上だし。てか手が出ないんだけど。捲れないし。
「陣平さーん、出ましたよー」
松田「おー……っておまえ、ズボンは？」
「履けなかった」
松田「あー……」
こんな事なら、持ってきておけばよかった。車に積んでおくべき？まぁ今更なんだけどさ。
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作者名：ゆな
| 作成日時：2019年9月18日 9時
