些細な幸せ ページ17
＊
吐く息が白く空に滲んでいく。
悴んだ指先を冷たい手で覆っても、暖かくなるわけも無く、
落ち着いた紫色のマフラーに顔を埋めて、電車を待つ。
もう少し厚手の上着を着てくれば良かったと考えながらスマホで時間を見る。
9：43
あと2分…
降る雪を眺めながら残りの120秒を過ごす。
耳や鼻が赤く染っていく中でマフラーを指先で少し掴む。
まだかまだかと線路の左右をきょろきょろしていると、不意に頬に冷たい指が当たった。
肩をすぼめると後ろからいつもの声が聞こえた。
「買ってきた」
『おかえり』
鼻までマフラーに埋もれて彼の方を振り向くと缶のココアを飲んでいた。
『…ちょーだいよ』
普通当てるならココアだろ。
ずるい、と言わんばかりに頬を膨らませれば
マフラーを指でちょいと下げて直接口元に缶を宛がった。
缶が傾いてココアが垂れる前に顔を傾けてそれに合わせる。
今度は火傷する熱さに肩をすぼめてから何口か貰うとショッピがあとの残りを飲んだ。
体内から温度が上がり身体の外がついて来れず身震いすると
彼のベージュのコートを着せられた。
有難く上着の襟を掴んで身に寄せて、マフラーに埋もれる。
『…ありがと』
「おん、…」
寒そうに鼻をすするショッピを見て、コートやマフラーを渡そうとは考えたが
これは彼なりの優しさで男らしさを見せるためなのだと思いそれはやめた。
だが他に思いつくものがあまり無かったのでショッピの冷たい手を私の冷たい手と優しく繋ぎ絡めた。
そしたら、そのまま私の手ごとショッピのポケットに入れられてぎゅっと握られる。
なんだか嬉しくて心まで暖まり、彼の手をぎゅっと握り返した。
「…寒いな」
『うん、』
頬が赤く染った。
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雑主_A(プロフ) - いちみさん» 最後までご愛読ありがとうございます、物語や関係性を楽しんで頂けてとても有難い限りです！作品を見つけて頂きありがとうございました！ (9月16日 22時) (
レス) id: b32c491b45 (このIDを非表示/違反報告)
いちみ - 完結おめでとうございます!私は二人の関係性が凄く好きで､こんな神な作品を作れる人初めて出会いました！特に最後ら辺は涙が溢れてしまいました…これからもずっと応援してます！頑張ってください！ (9月16日 9時) (レス) @page38 id: d3cec39784 (このIDを非表示/違反報告)
雑主_A(プロフ) - のすけ。さん» ありがとうございます！作品に様々な感情を抱いて読んで頂けて嬉しく思います、作品の在り方としての本望です。ご愛読頂きありがとうございます！ (9月2日 6時) (レス) id: b32c491b45 (このIDを非表示/違反報告)
のすけ。(プロフ) - 完結おめでとうございます！更新お疲れ様でした！2人の関係性に時にもどかしさを感じたり、時に感情溢れて泣いたりしました。この作品を見つけて本当に良かったです。素敵な作品をありがとうございました！ (9月2日 6時) (レス) @page38 id: 5a489ae30f (このIDを非表示/違反報告)
雑主_A(プロフ) - キルさん» ありがとうございます！最後まで楽しんでいただけて光栄です、ありがとうございます！ (9月1日 22時) (レス) id: b32c491b45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雑主_A | 作成日時：2023年7月27日 16時
