過去のこと ページ27
夢だとすぐに分かった。
父親、そう呼びたくはないが——と、兄がもみくちゃになっている。手やら足やらもう何が何だか、喧嘩というには恐ろしくてその場から動けずにいた。
何を言っているのかよく分からなかったが、私に向かって指を指し父が口を動かす。
兄がそれを制すが父は止まらない。私は呼吸浅く何も言えずに突っ立っていた。
そんな私が気に食わなかったのか、父がおもむろに金色のトロフィーを手にした。
そうだ、これは兄が中学の時の。兄が、嬉しそうにトロフィーを持っていたんだっけ。お兄ちゃんの真似をして、私もって、部活を。
あれ。
私に振り翳された金のソレは赤くなっていて、私は床に転がりぐったりとした兄の重みを感じていた。兄の額からはとめどなく赤色が流れ落ちていて、私の服を染めていった。
回らない頭で携帯に手を伸ばし、震える指で数字をタップしようとして父が私に手を伸ばす。
ころされる。
ここから先は、断片的にしか思い出せなくて、夢の中でも曖昧だ。
ただぐったりとした兄の頭はひどく重くて夢の中でさえ鮮明に思い出す。
私はいつも兄を救えずにここで、目を覚ます。
額に汗をかいているのが分かった。この夢をみる時は決まって息苦しくなってやっと目を覚ますのだ。フカフカのベッド。昨日ビーチに来たことも夢ではないと自覚する。日が照っていて外からは笑い声が聞こえる。
「なんでここにいるんだろ」
兄ではなく、私が。
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かえで(プロフ) - おこめさん» えー!ありがとうございます!見ていてくださってたんですね。めちゃくちゃ嬉しいです…!今後ともよろしくお願いします! (2023年2月20日 23時) (レス) id: 8a349644e1 (このIDを非表示/違反報告)
おこめ(プロフ) - かえでさん初めまして!いつも楽しく拝読させていただいております!更新頑張ってください。陰ながら応援しております^ᴗ͈ˬᴗ͈^♡ (2023年2月20日 22時) (レス) id: 9157f8724a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かえで | 作成日時:2023年2月8日 19時