まるばつさんかくしかく関係【完】

３ ページ14

・



「……電車来るまでね」
「うん、それでいいよ」

そう言ってやわらかく笑んだ彼の後ろに続いて、また増えつつある人の賑わいからそっと離れた。


ベンチに腰掛けると、何故か少しだけ気持ちが落ち着いた。カイロみたいにあたたかい缶コーヒー。飲んでしまいたいけれど、あたたかさを手放すのが惜しい。

なんとなく、Aの笑顔を思い出した。




ホーム半ばに目をやると、酔っているせいか、ひたすら陽気に話す学生たちのいる場所が、そこから少し距離をとっただけなのに、まるで別の世界にいるように感じて不思議だった。


「あつっ」


…なんだろう。
どうしてこのひと、ここにいるんだろう。
空気みたいにそっとそこにいる阿部亮平のことが、私はよくわからない。



よく見たらあっちはココアだった。
ふーふーって息をはきかけて、慎重に缶を傾けている。

のろのろとした動きがちょっと面白くてじっと見つめていると目が合って。
しばらくそのまま見つめ合う。


「…ちょっとさ」
「ん？」
「寂しいよね」




「…うん」





















うん。寂しいよ、すごく。


だってあんな友達、他にいない。
もうきっとあんな子には出会えない。


…私は、お人形さんではいられないから、
昔から人と衝突することが多くて。

なんでだろうね。
私が私の好きな姿のまま、正直な言葉を口にすればするほど、

男の子には、調子に乗ってる、って見下されたり、言うほど可愛くない、とか、勝手に評価されたりした。

女の子だって同じようなもの。
かわいいのに、かわいいくせに、かわいいからって、とかって、ね？

頭にそれつければ何言ってもいいの？
何言われてもいいような人間なの？私。

見た目の評価なんて好まれるか好まれないかの事実でしかないのに。
比較的好まれればそれに伴う理不尽は、我慢しなければならないという風潮には、つくづく嫌気がさした。

好きでもない人間に告白されたって嬉しくないし、それがクラスメイトの好きなひとだったとしても、そんなの聞いてないから知らないし。



大学生になってからも、同じようなもんで。
最初から関わらなければいいと避けても、周りが放っておいてくれない。

４→←２

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す