ONCE UPON A TIME～真実の愛のキス～2 (ページ16)

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【ストーリーブルック】

Aside

貴「…河合さん？」

郁「おはよう、A」

ドアを開けると

そこには河合さんが立っていた。

突然の訪問に驚きが隠せない。

一体何をしに来たのだろうか？

貴「…家賃ならちゃんと払ったはずですが？」

河合さんはここの大家なのだ。

ここのというより、

この町全体の、だけど…

郁「今日は別の件で来たんだ。君に頼みがあってね」

貴「頼み…ですか？」

郁「ああ、そうだ。入ってもいいかな？」

貴「ええ、どうぞ」

スマートなスーツに身を包み

立ち姿から何まで優雅な河合さんと

私のアパートではかなりアンバランスだった。

案の定、私の出したコーヒーは

彼の口には合わなかったらしい。

河合さんはにこっと微笑み

カップを遠ざけた。

郁「早速本題なんだが、君に人を探してほしいんだ。そいつは私からあるものを盗んでね」

貴「保安官に頼んだらどうです？私なんかよりもよっぽど役に立つと思いますよ」

郁「突然いなくなった阿部顕嵐を見つけ出した君の功績をかって頼みたいんだ。君には人捜しの素質がある」

貴「どうかしら」

正直、河合さんが正気だとは思えない。

私に人捜しの才能？

一体どこをどう見て言ってるんだ？

ただでさえ顕嵐のことで頭がいっぱいなのに

面倒ごとは願い下げだ。

なんだけど…

貴「盗まれたものって？」

そうは言っても、

興味を持ってしまった馬鹿な私。

ほっとけばいいのに

こうなってしまっては仕方ない。

郁「私にとって大切なものとだけ言っておこう」

貴「知られちゃまずいものってわけですか？」

郁「知ったあとの君の身を案じているんだよ、A」

河合さんはそう言って笑った。

なんとも不気味な笑いだ。

背中が震えるのが分かった。

貴「…それで？誰を捜してほしいんです？」

郁「羽村愛梨という10代の妊婦だ」

ガシャーン！！

郁「大丈夫か？」

まさかそんな…

愛梨さんが盗みだなんて…

私はわけが分からず

その場に立ち尽くしてしまった。