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壱 話 ページ3





















真冬の夜、Aがこの地に産み落とされて16年が経った






Aは家の裏に咲いている黄色い花を撫でると、先程河原で手洗いした衣服を干し始める







「A、おいで」




『どうしたの?お母さん』






一通り干し終えたところを呼ばれたAは、縁側から手招きする母の元へ歩み寄った






「町へ買い物を頼んでいいかしら?」




『任せて!』




「ごめんね、よろしくお願いね。雨が降りそうだから傘を持っていきなさい」






母から買う物を言われ、小銭を受け取り傘を持つと、


気をつけて、と声をかける母に行ってきますと返した









少し歩き街並みに出ると、いつも利用している目当ての店に向かって歩みを進める






「あら、Aちゃんお買い物?」




『こんにちは、富江さん。はい、母に頼まれて』




「偉いわねぇ。雨が降る前に帰りなさいな、」




『えぇ、ありがとうございます!』





声をかけてくれる人達に笑顔で挨拶を返していると、目の前に若い男性が恥ずかしそうに立っていた





「あの、Aさん!これ、読んでください!」





すっと差し出されたのは白い封筒



言わずもがな、恋文である





『えっと…はい、読ませて頂きます。ありがとうございます』




困惑した表情で受け取ると、手紙を大事そうに抱えて微笑むA


そんな彼女に顔を赤くさせた男性は、失礼しました!と踵を返して走って行った









_Aはとても美しかった



雪のように白い肌、濡れ羽色の艶やかな黒髪、妖艶で月夜に光り輝く藤の花の色の瞳、それを縁取るかのように並んだ長い睫毛、林檎飴のような唇

そして目鼻の整った顔立ちの美人な母と、色男である父

その間に生まれたAは息を飲むほどに美しかった



加えて両親の教育で、素直で器量の良く、心優しく育ったAは、齢16にして立派な女性へと成長をしていた



そして貰った恋文に全て律儀に返信するAに、男達は寄って集って求婚を申し込むのである









Aが無事に買い物をすませ空を見上げると、雨がぽつりぽつりと降っており、それは次第に強くなっていく





傘を差し家へ歩を進めていると町からほんの少し離れた地蔵の雨避けとしている小さな屋根で雨宿りしている男性を見かけた





その横顔がどこか憂いを帯びており、悲しそうだったのでAは堪らず声を掛けた





その人の耳には花札の耳飾りが揺れていた

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恋淵(プロフ) - 何度も読み返してます!!とても続きが気になります…更新頑張ってください!! (2020年7月5日 2時) (レス) id: 8c2670d918 (このIDを非表示/違反報告)
モッチー - 早く続きが見たい!更新待ってます! (2020年2月17日 18時) (レス) id: 34421024d8 (このIDを非表示/違反報告)
瀬戸(プロフ) - とても面白いです!更新楽しみに待ってます! (2019年12月15日 23時) (レス) id: aeec6d80c7 (このIDを非表示/違反報告)
SAKI - 凄く面白いです!更新楽しみにしてます!!!頑張ってください! (2019年11月17日 19時) (レス) id: b6b3e612da (このIDを非表示/違反報告)
れいれい - わぁ!とっても面白かったです!!これからも更新頑張って下さい!! (2019年11月2日 23時) (レス) id: 37bbb80034 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あか | 作成日時:2019年10月18日 21時

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