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江口拓也 × おやすみ ページ44

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思っていたよりも遅くなってしまった。
太陽はいつの間にか姿を消し、
月が顔を覗かせる時間になっている。


「ただいま、ごめん遅くなっちゃっ…た…」


家は明かりがついていたけど、静かだった。
ダイニングテーブルに置かれていたのは、
俺の分のラップをかけられた晩ごはん。
椅子に座り、机に突っ伏して寝ているA。
夢の中へ行っているようだ。


「ごめんね」

彼女は、髪を手で梳いても微動だにしない。
眠りが深いんだね。いいこといいこと。
今日の晩ごはんは白飯と豚汁と肉じゃがみたい。


『…ぁ、ごめん、寝てた』

「あ、起きた?寝ててよかったのに。」

『拓也が家帰って、電気ついてなかったら
寂しいだろうなって思って。』

「ありがと」



彼女が俺の顔に手を伸ばしかける。
触りやすいように目線を合わせてしゃがむと、
体温の低い指が、俺の目の下を滑る。



「どした?」

『クマ出てる。お疲れだね。』

「目立つ?」

『ちょっと。』



肉じゃが温め直す?って聞かれたから頷いた。
小さく鼻歌を歌い、キッチンで動く彼女。
彼女の毛先が歩くのに合わせてふわふわと
揺れるのがたまらなく可愛い。
にこっと嬉しそうに笑う彼女を見ると、
仕事頑張ってよかったなって心底思う。
この笑顔のために、俺は働いているんだ。
困ったなぁ、可愛いがすぎる




「ありがとう、いただきます」

『はい、どーぞ』




美味しいよ、って言えば
得意料理だからね、と返ってくる
そのやり取りでにやけてしまうのは、
よっぽど重症だから?
君はそのまま笑っていて。
君には、世界で1番幸せでいて欲しいんだ。




『美味しかった?』

「幸せの味がした」

『相変わらずそういうセリフが似合わない』

「仕事で死 ぬほど言ってるのに」




じゃあそれは向いてないのかもね、
なんてイタズラな笑顔を向けてくる。
そんな顔をされると、なんでも良くなる。
もうお風呂わいてるからいつでもどうぞって
声をかけてくれるあたり、さすがだ。
至れり尽くせりで頭が上がりません。





「お風呂ありがとう」

『湯加減良かった?』

「よかった」


疲れと満腹感からくる眠気には勝てそうにない。
彼女が僕の方を叩くのは、俺と彼女だけの合図。
振り返って、彼女のおでこに軽く唇を落とす。
彼女もかわいいキスをひとつ、唇へ落とした。



『おやすみ』

「おやすみ、今日もありがとう」

『ふふ、うん。』



今日もありがとう。
君の一番でいさせてくれてありがとう。

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琴音 - またまた続けてのコメントですみません。 僕の妻を決めるという名目で行われているこの舞踏会 近寄ってくる女は、そりゃあ自分の自信があるから これ正しくは自分に自信があるからではないんでしょうか? (2月20日 1時) (レス) id: 6d33361b7d (このIDを非表示/違反報告)
琴音 - また続けてのコメントですみません。 物語読んでいて気が付いたのですが。。。 吉沢亮×舞踏会のここの部分 その人は突然現れた。 (2月20日 1時) (レス) @page26 id: 6d33361b7d (このIDを非表示/違反報告)
琴音 - 続けてのコメントですみません。 勇人も私がいるから大丈夫と思ってくれていた。 これ正しくは勇斗にブレーキを 勇斗も私がいるからではないんでしょうか? (2月20日 1時) (レス) id: 6d33361b7d (このIDを非表示/違反報告)
琴音 - こんばんは。 はじめまして。 夜分遅くにいきなりすみません。。。 物語読んでいて気が付いたのですが。。。 磯村勇斗×おまじないのここの部分 人より少しやんちゃ気味だった勇人にブレーキを かけるのはいつも私の役目だったし、 (2月20日 1時) (レス) @page20 id: 6d33361b7d (このIDを非表示/違反報告)
- 主さまが書かれるお話がとてもすきです、!もし2作目を作られるときはまた猪野さんのお話を読みたいです、! (2021年9月6日 5時) (レス) id: 9e30f74729 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:どりー | 作成日時:2019年8月9日 8時

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