モ ノ ゴ ト リ

影山飛雄 × パピコ ページ42

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「何してんだ」


坂ノ下商店のベンチで肉まんを頬張る放課後。
委員会が長引いて薄暗くなった空を見上げていると、
足元に日が落ちてきてすっかり薄くなってしまった
影がすっと出てきて伸びた。声のした方に顔をあげる。


『飛雄』

「お前、帰んねえの？」

『見たらわかるじゃん、食事中』

「ひと口」

『ん』







自分の肩口に肉まんを上げると、飛雄が口を寄せる。
ちいさく「うま、」と呟くと、私を見てニヤッとした






「甘いモン食いてぇ」

『なんで笑うの(笑)』

「なんか、わかんねぇけど(笑)｣

『買ってきなよ』

「買ってくる」




坂ノ下商店に足を進める飛雄の後ろ姿を横目に見送る。
飛雄がかじったひと口をみると、
口の大きさの違いを改めて感じられる。
…いや、ひと口でかすぎじゃね？
ほぼ食われてる気がするんだけど




「A、買ってきた」

『ねえ、ひと口でかすぎ』

「？普通じゃねえか？」





ケロッとした顔で首をかしげる。
飛雄の黒のサラサラの髪の毛がさらり、と揺れる。
アイスの袋も一緒にかさりと音を鳴らした。





「パピコ」

『もしかして半分こするため？』

「…あぁ、そういう食い方もあんのか」

『それがメインの食べ方でしょ』






ん、と差し出されたパピコの片割れを受け取る。
肉まんで暖められた手のひらの体温がじんわりと
パピコにもうつる。隣で飛雄もパピコをくわえた。






『うま』

「ふ、」

『また笑うじゃん』

「うまそうに食うから」

『美味しいもん』

「A、あれ、この前授業中にやってた変顔」

『またあ？』

「見てぇ」

『も〜……ほら』

「ぶはっ！！」




変なツボに入ったのか、声を殺して笑う飛雄。
バレーをしている時とは違う無邪気な向日葵のような
笑顔が見られるのは、私だけなのかと思うと、
少し優越感。いいよね、ちょっとくらい感じても。
まあその笑顔の源が私の変顔なのは多少不服だけども。
飛雄がそんなに笑顔ならいいけども。




「おまえ最高だな」

『褒められてんだかなんなんだか』

「あー、腹いたい」

『もー、食べ終わったなら帰ろ』

「おう」

『ね、冷えたから手繋いで帰ろ』

「ん、」

『ん。』



アイスで寒くなったから手繋いで帰ろう
だなんて、口実でしかないんだけれど。









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