モ ノ ゴ ト リ

伊野尾慧 × ケーキ屋 ページ21

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某S駅から徒歩15分。
少し駅から離れたところを道沿いに歩く。
そして、コンビニと薬局の間を左に曲がり、路地に入る。
8mほど進むと開けたところにでる。そこにあるケーキ屋さん。ここは僕、伊野尾慧の行きつけのお店。









『いらっしゃいま…あ！けいくん！いらっしゃい！』

「やっほ〜！ケーキできてる？」

『もちろん！名前は知念さん宛てのでいいんだよね？ゆうりって書いてハート書いとく？』

「馬鹿！知念と付き合ってねえよ笑笑」









基本、差し入れとか手土産とかはここのお菓子を買っていく。素晴らしく評判が良いのだ。
メンバーにも好評で、誕生日のケーキは
ここのお店を見つけてからというものの、
毎年俺が担当。ちなみに俺のお気に入りは
モンブラン。生クリームと栗のクリームの甘さが
控えめで軽く3個は食べられる。









『ふふ、冗談だよ。なんて書く？名前。』

「知念！happy birthday！！でいいよ」

『了解！』





　



　



最後の仕上げだ〜って腕まくりしながら奥に消えていくA。俺がこの店を選び続ける理由は他にもあって。それは、この店を1人で切り盛りするAに恋心を抱いているから。






『書けた書けた、さて、ろうそくどうする？』

「あ、いつもの数字のやつで」

『おっけーい』








栗色のミディアムヘアを一つに結び、
くるんとしたまつ毛とぱっちりして少したれた目。
少しそばかすのある肌は愛嬌抜群で可愛らしい。
まるで海外映画に出てくるヒロインのようだ。
小さめの鼻に、いつもにこにこした口。
世間一般的に可愛いと必ず言われる顔面に、
人当たりの良い性格は、俺の好みのど真ん中を走り去っていった。









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『はい！ケーキの完成図こんな感じだけどいい？』

「100点！ありがとう！」









でも、この100点の笑顔を見ちゃうと告白しようって
いう覚悟の気持ちがコロンっと変わっちゃう。
とりあえず今は、伝えてこの関係が崩れるのが怖い
とひたすら思っている。
もうちょっと時期を伸ばしてから自分の口から言おう









『おかいけい○○,○○○円です。』

「はい」

『ちょうど、ありがとう〜！また来てね！！』

「すぐ来るね」

『待ってるよ』









この気持ちには少しの間蓋を。

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