【仁王雅治】幸せ

12. ページ12

.















自分の、Aへの想いが泣くほど強いとは思っていなかった









｢すんません…全然質問に答えれてない｣








涙を拭いながら医者に謝ると、








｢いや、いいんです…そうか、Aさんは二度も…君を救ったんだね｣









その言葉にすかさず顔を上げて問う









｢…どういうことですか｣









｢…恋人とか家族とか、二人同時に事故に巻き込まれたとき、稀に起こることなんだよ。｣








窓の外に見える海を見ながら優しく喋り始めた医者








｢片方はもう…死んでしまっているけれどもう一人には生きて欲しい｣








その言葉に拳を握る俺







｢だからその人の見ている走馬灯に入り込んで、生きて欲しい大切な人を殺す｣








｢この行為が意味するのは、死の世界とその人を切り離すということ。
この世へ強制的に戻すということだ。｣









現実味のない話だと思った









だが、今まで自分が見ていた夢が走馬灯と言われればなんの不自然もない












｢じゃあ、Aは…｣













｢ああ｣









窓から俺へと視線を戻した医者は言った

















｢…死ぬはずだった君のことも救ったんだ｣













だからいつもあんなに辛そうな、悲しそうな顔を？









いつから俺の夢に、走馬灯の中に入っていた？もしかして……















最初から？



















｢……Aっ…｣





















涙が止まらなった



















.

13.→←11.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す