39.観覧車 ページ40
―仁王side―
｢あの日の精市は、雅治だったんでしょ？｣
“精市”
その名前は、幸せだった俺の気分を一気に悪くさせた
｢･･･｣
｢答えて、雅治｣
俺はここで答えたら何かが崩れてしまう。直感的にそう思った
｢･･･雅治と、前に進みたいの｣
Aがどういう意図でその言葉を言ったのかは分からんが、
幸村のことが好きなのに何度も期待させて、胸を締め付けるAに無性に腹が立った
この胸の痛みをなんと言うのか分かりたくない
｢だったらなんだと言うんじゃ｣
俺は自分でも分かるぐらいの冷たい声で言う
Aの目は見るからに怯えている
そんな目は見とうない、心の中ではそう思っているのに顔と声に感情が出る
Aといる今の俺はペテン師なんて絶対に名乗れんじゃろう
｢･･･なんで精市になって私に告白したの？｣
Aに痛いところをつかれ、苦し紛れに言う
｢別になんでもいいじゃろう、からかっただけぜよ｣
｢それなら、どうしてあんなに悲しい顔で資料室から出てったの･･･？｣
｢それは･･････っ｣
俺は昔から嘘をつくのが上手かった
でも人が俺の嘘に気付かないと、俺はどこにもいなくなる。それが悲しかった
特にAが気付いてくれないと真っ暗闇に取り残された気分だった
｢･･･私が雅治に気付いてあげられなかったから、雅治はあの時どこにもいなかったでしょ？｣
考えを読まれていたのかと思いAを見ると、その目は悲しみと愛しさで溢れていた
俺はその目から逃れるように言う
｢･･･幸村に好きと言われて、嬉しかったじゃろ？｣
否定して欲しい質問を投げつける、しかし
｢あんないい人から告白されたら誰だって嬉しいよ｣
返ってきた言葉は1番言って欲しくない言葉だった
｢でも私は｢もういい！！･･･もういいぜよ｣
泣きそうな声に気付かれないように、
いつの間にか一周していた観覧車を降りてAの前を歩き、距離を置く
｢･･･なんで雅治はいつも自分の中だけで終わらせちゃうの？｣
後ろを振り返らずともAが泣いているのは声で分かった
｢少しぐらい･･･！！人に･･･私に頼ってよ！！｣
その言葉に俺は振り向く
｢A･･･｣
｢もう帰るっ･･･｣
そう言ってAは出口へ走って行った
今の俺にはAを追いかける資格すらない
俺は夕方の道を一人帰っていった
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みかん - 申請ありがとうございます！マイスペいいねしました更新頑張ってください (2019年9月7日 2時) (
レス) id: 84f3235ae9 (このIDを非表示/違反報告)
なる(プロフ) - みかんさん» コメント励みになります〜！ありがとうございます！テニラビのんびりですがやってますよー！申請したので、よろしくお願いします^^ (2019年9月5日 15時) (レス) id: 172c2f54a2 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - 仁王好きです更新頑張ってくださいテニラビやってますぜひ申請お願いしますやってたらユーザー名はみかんですねんです (2019年9月5日 15時) (レス) id: 84f3235ae9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なる | 作成日時：2019年8月28日 11時
