９６． ページ47
「だから寺坂にも言っといたよ」
視界に映ったのは、ビュンと転校生くんの触手が寺坂に向かう様子。
「…気絶する程度の触手は喰らうけど、逆に言えばスピードもパワーもその程度。死ぬ気で喰らいつけって」
モロに触手を喰らった寺坂だけど、ぐっとその場で耐えてる。…ええ、すげぇ。私なら多分一発ダウン。
「よく耐えたねぇ。ではイトナもう1発あげなさい、背後のタコに気をつけながら…」
「っ…くしゅんっ！」
『え？』
ヘラヘラと嘲笑うみたいなシロの命令。その後に聞こえたのは可愛らしいくしゃみだった。
私はそれに対して首を傾げる。
「…くしゅんっ！………くしゅっ！」
何度もくしゃみをする転校生くんに、シロは不思議そうに黙る。
……あ、私仕掛け分かっちゃった。
「寺坂のシャツが同じってことは、昨日寺坂が教室に撒いた変なスプレー…、アレの成分を至近距離でたっぷり浴びたシャツだってことだ」
『私分かるよ、それって殺せんせーの粘液駄々漏れにした成分でしょ？』
「そうそう、そゆこと。つまりイトナだってタダで済むはずがない」
色々とカルマの考えていることが繋がった、理解した私はニヤリと口角を上げる。
もちろん背後でバキッと枝の折れる音がしたのは、…殺せんせーが原さんを助けた音だ。
『で、転校生くんにちょっとでも隙が出来れば…皆のお母さん原さんも殺せんせーが助けてくれるってわけね〜』
私が言うと同時にカルマは皆に指示を出す。
まぁ私はさっき若干死にかけたので行きませんけど。そこまでアホで無い。
「吉田！村松！お前らは飛び降りられんだろ、そこから！！」
「「はァ！？」」
崖っぷちで縋りついていた吉田と村松に声をかけた寺坂はイキイキと水を跳ねる。
「水だよ水！デケーの頼むぜ！」
「「しょーがねえなぁ…」」
理解したらしい二人は、顔を見合わせたかと思えば飛び降りる。
「ま、まずい！」
『え？美味しいの間違いだよ？』
恐らくこっちの作戦を察したであろうシロの動揺した声が聞こえ、くだらないボケをかましつつ、
『殺せんせーと弱点一緒なんだよね？』
「じゃあ同じ事やり返せばいいだけだ」
カルマの合図と共に、みんなは飛び降りた。
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