９３． ページ44
寺坂は戦いを見ながらも私たちに状況を説明してくれる。
「あいつらの安全に気を配るから、なお一層集中出来ない。あのシロの奴ならそこまで計算してるだろうさ、恐ろしい奴だよ」
『呑気に言ってる場合なんですか？あぁん？』
ポケットに手を突っ込んでヤンキースタイルな私が寺坂を睨みあげると、私を宥めるように間に入った磯貝くん。
「お前ひょっとして…今回のこと全部奴らに操られてたのかよ！？」
いや、まあそうだよね。
寺坂一人で仕組んだってことはないと思うんだけど。
こんな人としてイカれてる暗殺仕組むのなんてあいつらくらいしか。寺坂アホだからこんな巧妙なの考えられなさそうだし。
開き直るようにそうだと認めた寺坂を私はじっと見つめる。…寺坂が悪くないかって言われたらそうじゃないけどね。
「目標もビジョンも無ぇ短絡的な奴は…頭の良い奴に操られる運命なんだよ」
『…可哀想』
「AA。1回黙ろう」
『ウィッス』
カルマがニコリと奇妙に笑うもんだから、本日二度目のお口チャック。
「…だがよ、操られる相手くらいは選びてぇ」
グイッと襟首を持ち上げた寺坂は、力強い眼差しを私たちに向ける。
「奴らはこりごりだ、賞金持ってかれんのもやっぱり気に入らねぇ」
そう言いながらも、寺坂が向いたのはカルマの方だった。その視線に気づいたカルマがちらりと目線をあげる。
「だから…カルマ！テメーが俺を操ってみろや！その狡猾なオツムで俺に作戦与えてみろ！完璧に実行してあそこにいるのを助けてやらァ！」
…オツムって。言い方可愛いかよ。
そもそもカルマに操られるとか殺されるぞ。
お口チャックなうだから言わないけど。
「良いけど…、実行できんの、俺の作戦？死ぬかもよ」
『いやいや、死んじゃったらダメでしょ！寺坂アッ』
思わず笑いながらカルマの肩を叩いた私はハッとして口を閉じる。私に黙ってろだなんて無謀すぎる。無茶だわ。
「「「(こいつ…ホント台無しにするな…)」」」
『痛っ…』
カルマにパシッ、と頭をはたかれた私は頭を押さえてムッと口を噤む。
確かに喋っちゃったけどさ！こっちは1回死にかけてんだぞ！まぁ全然元気だけど！
呆れたように私とカルマを見ていた寺坂が小さく息を吐く。
「…やってやんよ、こちとら実績持ってる実行犯だぜ」
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