９２． ページ43
『…冷たい』
私の呟きに気がついたのかカルマは自分の着ていたカーディガンを私に投げた。
ぽすっとそれを受け取った私は袖に腕を通す。
「着てたら？」
『ありがと。…久しぶりに見たわ、カーディガン着てないカルマ』
白いワイシャツのみとなったカルマの姿がなんだか久しぶりで、新鮮な感じ。
じっと私のことを見つめている彼に首を傾げると、何故か私に、視線を合わせるようにしゃがんだ。
「さん、…に、」
『へ？』
「…いち」
『ッひ、…ぇああああああ！』
ガッと腰を掴まれたかと思えば、カルマは軽々と私を担いでひょいと下へ降りる。
アッ怖い。死ぬかと思った。めちゃくちゃ怖いです。
「重っ」
『死ねばいいのに』
下に降りたところで私を下ろしたカルマがそんなことを言うもんだから、私はカーディガンの裾を捲りながらジト目で吐き捨てる。
急に担いでおいてよく言うよね。そしてデリカシーが無い。
「A！大丈夫！？」
『えへ、無事！』
メグに心配されつつも、私は殺せんせーの方を見る。
シロさんと…転校生くんだ。
『あの爆破ってあいつらが仕組んでたの？』
「…うん。それにしても押されすぎな気がする。あの程度の水のハンデは何とかなるんじゃ？」
不思議そうに戦いを見下ろしながら呟いたメグに、今度は背後から声がかかった。
「水だけのせいじゃねー」
『…ジャイアンかと思った』
「黙れ」
『すんません』
ボケたつもりは無いけど。前原にガチトーンで怒られたので黙ります。
「力を発揮できねーのはお前らを助けたからよ」
私たちのせいで殺せんせーが押され気味？
口を閉じたまま首を傾げる私に、寺坂は顔を向こう側へと向けた。
「見ろ、タコの頭上」
彼の指差した先を皆で見る。
その先には今にも落ちそうな状態で木にしがみついている原さんがいた。
いや、その他に吉田や村松もギリギリな状態。
「助け上げた場所が触手の射程圏内に！」
「特に…ぽっちゃりが売りの原さんが今にも落ちそうだ！」
『あ"ぁぁ！！原さぁぁん！お母さーーーーんッ！』
閉じていた口が思い切り開いた上に、喉と頭が痛かったのを忘れ思わず叫んでしまう。
「A…叫んで大丈夫なの？」
『屁でもない！』
「屁って…」
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