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殺せんせーが泳げない。
…私たちの大半がそう察して顔を見合わせた時だった。
「あ、やばっ！バランスが……うわっぷ」
カエデがバランスを崩してプールに落ちたのは。
ばしゃん、という水音に私は音のなった方を振り返ったところでそのことに気がついた。
『カエデぇーーーーっ！』
「ちょ、バカ何してんだ茅野！」
「背ぇ低いから立てねーのか！」
『前原おまっ、そんなこと言ってないで早くカエデのこと助け………って、っうわああああっ』
私は前に身を乗り出したのと同時に頭から落っこちてしまう。
「ば…っ！！あのアホ！！」
近くにいた前原は私を引き上げると「なにしてんだよ！」とツッコミを入れるような口調で声を発する。
息を整えながら前原にしがみついた私は「水怖い！！！」と彼の肩に顔を埋めた。
「お前泳げねーんだ」
『そうだよ悪い！？』
「いやそれしか言ってねーよ」
私まで死にかけてた間に、カエデはメグが助けてくれたらしい。…どこまでもイケメンですね。
·
そして始まった緊急会議。
私はぐっしょり濡れた制服のままでいるわけにも行かないので前原が無言で渡してくれたジャージの上着を着ている。
優しいところあるじゃん、とか思いつつもみんなの会話を聞く。
「まず問題は殺せんせーが本当に泳げないのか」
「湿気が多いとふやけるのは前に見たよね」
「もし仮に全身が水でふやけたら…死ぬまでは行かなくとも極端に動きが悪くなる可能性はかなり高い」
磯貝くんの言葉にふむふむと頷いていた私に「ちゃんと意味わかってる？」なんて言い出すカルマ。
…こいつ失礼極まりないな。
「…水中にいるのが私だったらいつでも任せて。バレッタに仕込んだ対先生ナイフで、いつでも殺れる準備はしてる」
『やばい惚れる…、てか惚れた』
「昨年度の水泳部クロール学年代表片岡メグ選手の出番ってわけだ」
前原の言葉にびっくりする。初耳だ。
…どこまでかっこいいんだうちのクラスの委員長2人は！！
「まず大事なのは、殺せんせーに水場の近くで警戒心を起こさせないこと。夏は長いわ、じっくりチャンスを狙ってこう！」
メグの言葉に「おう！」とみんなの声がそろう。もちろん私の声も。
「A泳げないじゃん」
『私にだってできることはありますぅ』
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