７１． ページ22
「このガキ…父親も同然の俺に刃向かって、まぐれの勝ちがそんなに嬉しいか…！」
顔を真っ赤に…いや、それを通り越して真っ黒になってる。
ビキビキと立っている青筋に、さすがの私も「うわぁ」と声を漏らした。
「もう一回だ！今度は絶対油断しねぇ…！心も体も残らずへし折ってやる…！！」
『どっちがガキだよ。いい大人が必死になっちゃって恥ずかしい。…男に二言は無いんじゃなかったぁ？あれぇ、おかしいなぁ？』
くるくると横髪をいじりながら首を傾げれば、誰かが「カルマそっくり…」と呟いたような気がした。
やめてくれ、あんなやつと同じにするのは。
そんな私のことを宥めた渚は、真っ直ぐ鷹岡と向き合った。
「確かに、次やったら僕が負けます。でもはっきりしたのは鷹岡先生、僕らの担任は殺せんせーで僕らの教官は烏間先生です。これは絶対に譲れません」
その言葉に、ぱちりと前原と目が合う。
彼は小さく笑うと、頷いて渚と鷹岡の方に視線を戻す。…もちろん私も同じように。
「父親を押しつける鷹岡先生より、プロに徹する烏間先生の方が僕には暖かく感じます。本気で僕らを強くしようとしてくれてたのは感謝してます」
そこまで告げたところで「でもごめんなさい、出て行ってください」と頭を下げた渚。
ぴくぴくと表情筋を引き攣らせた鷹岡が、鋭い瞳で渚のことを睨みつける。
…きっしょ。
「黙っ……て聞いてりゃ、ガキの分際で…大人になんて口を…」
反射で渚の腕を引こうとした時には、ゴッという鈍い音と共に鷹岡は後ろに転がっていた。
「…俺の身内が迷惑かけてすまなかった」
そう、渚に殴りかかろうとしていた鷹岡は烏間先生によって阻まれたから。
「後のことは心配するな。俺一人で君たちの教官を務められるよう上と交渉する。いざとなれば銃で脅してでも許可を貰うさ」
「烏間先生！」とみんなの嬉しそうな声が重なる。
…がしかし、私たちの会話を聞いていた鷹岡はむくりと起き上がってほざいてる。
「くっ…、やらせるかそんなこと。俺が先にかけあって…」
「──交渉の必要はありません」
そんな必死な鷹岡の言葉を遮ったのは、聞き覚えのある“嫌な声”だった。
みんなが「理事長！？」と驚く中、私は頭の後ろを搔いて目線を逸らした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 427人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
