爽やかで甘い、:05 ページ5
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「はいお待ちっ、カカオフィズになります!」
それから10分も経たないうちに、菊池さん本人が運んできたカカオフィズというカクテル。
茶色っぽくてレモンティーのような見た目に、驚いた。カクテルとは、こういうものなのだろうか。
ちらりと金田一を見る。焼き鳥を食べながら、笑って頷いた。
菊池さんは、持ち場に戻ろうとなんてせず、にこにこと笑ってこちらを見ている。いや、働けよ。
……レモネードの、さわやかな香り。
意を決して喉に流し込むと、彼女の言った通り、苦くはなかった。むしろ、ちょうどいい甘さ加減で、うまくて、なんだか悔しい。
「おいしい……です」
「! ほんと!? よかった〜」
安堵した表情の菊池さんをよそに、もう一度飲んでみる。
さっぱりとした甘みと、本当に微かなカカオのにおい。少ない酸味。
はっきり言って、どタイプな味である。
「ふふ、いい飲みっぷり!」
「! あっ、いや」
「いいんだよ、おいしければそれで。ちなみにそのカクテルの言葉、とっても素敵なんだけど、知りたい?」
……変な聞き方をする人だ。話したいのなら聞くし、勝手に話せばいいものを。
「知りたいです」
視界の端で、目を丸くさせる金田一がいたけれど、その表情はどういう意味なのだろうか。
菊池さんは満足げに頷き、こほんと咳払いをしてから、言った。
「『恋する胸の痛み』だよ。素敵でしょう?」
「……味に全く関係ないんすね」
「こらそういうこと言わないの! でも、そうだね、名は体を表すっていうけど、そういうのだったらゴールデンデイズしか知らないかも。あっちなみに『優雅で無邪気な感性の持ち主』って言うんだけど、チョコレートファッションドなんて、『リズム感のある生活を楽しむ人』だからねえ」
……今の短い会話の中で、やけに長いお酒とその言葉があった気がするけれど、この人は一体いくつのお酒を知っているのだろうか。
お酒に強いようには見えないけど。
「いくつぐらいカクテルについて知ってるんですか?」
「んー? そうだね、有名じゃないけど、誕生酒っていうものがあるんだよ、世の中には。それはもちろん365種類あって、それは全部覚えているし、さらにあと2倍ぐらい? かな」
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作者名:ふいぁさ | 作成日時:2018年10月27日 7時