爽やかで甘い、:03 ページ3
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彼女はどうやら、ハツラツで元気だが、どうにも面倒な性格みたいで。
カクテルには興味ないこと、ただオススメを教えて欲しかったということを伝えるのには、さすがに骨が折れた。
金田一は、「悪い、こんな人なんだ」 と言ってくる。
悪い人でないのはわかる。
が、どこかの影山みたいに、俺とはめっきり合わない。と思う。
「いやあ……ごめんね? 突っ走っちゃうんだ、私」
「まあ、大丈夫です」
「それで、オススメのカクテル? だっけ」
「はい」
えーっとね、と メニューを確認していく菊池さん。
どうやら日替わりで楽しめるものが多数あるらしく、そこから選んでくれるとか。
「国見くん、味は何がいい? 酸っぱいのとか?」
「……甘いので」
「へぇ、きみ甘党なのね。ふむふむ、なるほど」
ぱらりと1度だけ捲られるメニュー。その顔でか、なんていじられなくてよかった。
ここのカクテルはほんとうに種類が多く、それはカクテルに詳しいらしい彼女も悩むほどらしい。
いや、彼女がどれだけカクテルを知っているのかわからないけれど。
彼女は長い睫毛をぱちぱちと瞬かせ、ほんの数十秒そうしていたが、ついにこちらを見た。
金田一は届いた冷奴をついばみ、こちらを面白そうに見ている。オイ。
「えーっとね、チョコミルク系で甘いのだったら、最近新しく作ったモーツァルトミルクがおすすめかな。ミルク系で被るけど、まろやかなのはオーガズムだし。あとさっぱり甘いのがカカオフィズ、甘酸っぱいのがオペレーター……」
「え、」
どんどんつむぎ出されていく横文字に、思わず声が出る。
金田一は苦笑し、近くを通った店員さんも、「オイ相手引いてるから」 なんて言う。
マシンガントーク、というものだと思う。
モーツァルト? あの音楽家の? オペレーターなんて、仕事の名前じゃないのか。
「ん?」
「い、いや、そんな言われてもわかんないというか……カカオって、チョコのカカオ? 苦くないですか、それ」
「あっ! またやっちゃったね! ごめん! 久々に語ったからさ。カカオフィズは、ほんとにさっぱりしてるし苦くないよ。レモネード入ってるし。あ、それにする?」
「はあ……?」
なんなんだろうこの人は。
威圧感があるわけじゃないのに、なんとなく頷くしかない空気を作られ、しぶしぶそれにする。
彼女は飄々と「承りあしたー」なんて言って、軽い足取りで戻ってゆく。
何もかもが奪われた気がして、思わず机に突っ伏した。
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作者名:ふいぁさ | 作成日時:2018年10月27日 7時