検索窓
今日:6 hit、昨日:3 hit、合計:4,955 hit

爽やかで甘い、:03 ページ3

.

彼女はどうやら、ハツラツで元気だが、どうにも面倒な性格みたいで。
カクテルには興味ないこと、ただオススメを教えて欲しかったということを伝えるのには、さすがに骨が折れた。

金田一は、「悪い、こんな人なんだ」 と言ってくる。
悪い人でないのはわかる。
が、どこかの影山みたいに、俺とはめっきり合わない。と思う。

「いやあ……ごめんね? 突っ走っちゃうんだ、私」
「まあ、大丈夫です」
「それで、オススメのカクテル? だっけ」
「はい」

えーっとね、と メニューを確認していく菊池さん。
どうやら日替わりで楽しめるものが多数あるらしく、そこから選んでくれるとか。

「国見くん、味は何がいい? 酸っぱいのとか?」
「……甘いので」
「へぇ、きみ甘党なのね。ふむふむ、なるほど」

ぱらりと1度だけ捲られるメニュー。その顔でか、なんていじられなくてよかった。

ここのカクテルはほんとうに種類が多く、それはカクテルに詳しいらしい彼女も悩むほどらしい。
いや、彼女がどれだけカクテルを知っているのかわからないけれど。

彼女は長い睫毛をぱちぱちと瞬かせ、ほんの数十秒そうしていたが、ついにこちらを見た。
金田一は届いた冷奴をついばみ、こちらを面白そうに見ている。オイ。

「えーっとね、チョコミルク系で甘いのだったら、最近新しく作ったモーツァルトミルクがおすすめかな。ミルク系で被るけど、まろやかなのはオーガズムだし。あとさっぱり甘いのがカカオフィズ、甘酸っぱいのがオペレーター……」

「え、」

どんどんつむぎ出されていく横文字に、思わず声が出る。
金田一は苦笑し、近くを通った店員さんも、「オイ相手引いてるから」 なんて言う。

マシンガントーク、というものだと思う。
モーツァルト? あの音楽家の? オペレーターなんて、仕事の名前じゃないのか。

「ん?」
「い、いや、そんな言われてもわかんないというか……カカオって、チョコのカカオ? 苦くないですか、それ」
「あっ! またやっちゃったね! ごめん! 久々に語ったからさ。カカオフィズは、ほんとにさっぱりしてるし苦くないよ。レモネード入ってるし。あ、それにする?」
「はあ……?」

なんなんだろうこの人は。
威圧感があるわけじゃないのに、なんとなく頷くしかない空気を作られ、しぶしぶそれにする。

彼女は飄々と「承りあしたー」なんて言って、軽い足取りで戻ってゆく。
何もかもが奪われた気がして、思わず机に突っ伏した。

.

爽やかで甘い、:04→←爽やかで甘い、:02



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.5/10 (37 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
33人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ふいぁさ | 作成日時:2018年10月27日 7時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。