カカオフィズ【国見英】 (ページ13)

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爽やかで甘い、：13 ページ13

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「おまたせー！」
「ありがとうございます、」

時間を確認しただけのスマホを閉じ、目の前に出された料理と飲み物に目をやる。
チーズの素揚げは前回気に入ったもので、カカオフィズも同様だ。今のところ、このふたつより上等な料理とお酒を、俺は知らない。

「……いただきます」
「はいはい、どうぞ〜」

彼女もどこからか綺麗なお酒を取ってきて、俺の真向かいに座った。不快感はない。

チーズの素揚げを箸でつまむと、すぐに薄い衣が剥がれ、中の白いチーズが見えた。出汁が染みているようで、まっ白とはいえないが、それもまたおいしそうに見える。
ぱくりと口に放り込めば、やっぱり、おいしい。
鰹だしとチーズが絶妙である。頬がとろけそうという例えはあまり好きではないが、確かに、そう言わざるを得ないかもしれない。箸が止まらないというのは、こういうことだと思う。

グラスを手に取る。いつの間にか、彼女は真剣な顔でこちらを見ているような気がした。
ぐっと飲み干せば、さっぱりとした甘みと、あとから来る薄い酸味が、なんとも言えない。きらきら光るそれが、俺の目に、瞬いた。

「……最高っす」
「ほんと!? ありがとう！よかった！」

こちらもまた、きらきらした瞳で俺の事を見ては、「……嘘ついてないよね？」などと聞いてくる。もちろんそんなはずが無いので、「ついでないです」と事実を吐いた。

彼女は飛び上がりそうなぐらい有頂天な顔で、ただありがとうと言い続ける。
確かに自分で作ったものを褒められるのは嬉しい。俺だってそういうバイトをしている。
だが、そこまで喜ぶか？普通。なんて考えてしまう俺は、やっぱりひねくれているのだろう。

「どうしてそんなに喜んでるんですか？」
「えへへ、そりゃ嬉しいよ。自分で作った飲み物だもの。……私が初めて作ったカクテルが、これだったんだ」
「なるほど」

残り少なくなったグラスを見つめる菊池さんを見て、俺はまだ暖かい素揚げを食べる。やっぱり美味しい。

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