爽やかで甘い、:02 ページ2
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「ん? なんだこれ…… カクテル?」
「おっ、流石だな国見」
メニューを見ていてふと目に付いた、横文字の名前。あまり馴染みのない、たとえば女子大生なんかが飲むようなお酒が、このお店には豊富にあるようだ。
ひょろひょろと無駄に長い手足でメニューを差し、これがおすすめだよなんて教えてくれる。
「あ、でも、カクテルは初めてか?」
「飲んだことない」
「んー、じゃ、あの人に聞くか」
「あの人?」
その言い回しだと、まるでカクテルオタクみたいな人間がいるってことになるけれど。
金田一は、少し辺りを見回し、そこらにいた店員さんに声をかける。
「あの、菊池さんっていらっしゃいますか?」
「ん? ああ、Aちゃん? ちょっとまってて〜」
先程のへらりとした店員とは違い、妙に落ち着いた雰囲気の女店員さんは、台拭きを持ったまま奥へと消えていく。
キクチさん、を呼びに行ったのだろう。
耳が超人的にいいわけではないが、キクチさんだと思われる、澄んだ「はーい!」という声はよく聞こえた。
どたどたと駆けてくる姿は、先程の店員さんと同じ制服に身を包まれている。名前から想像していたけれど、やっぱり女の人だった。
「ええと、菊池さん、」
「あっ金田一くん! 来てたんだね、いらっしゃい」
「ハイ」
キクチさんが笑うと、金田一は背筋を伸ばし、どこか照れながら返事をした。
そういやこいつ、そういうのに興味がないというか、昔から関心がないんだよな。うぶすぎて及川さんに弄られまくってたし。
キクチさんは、「あれ、新入りくんじゃん!」とこちらを向く。
新入りくん、ということは、この人はここで働いていて長いのだろうか。
「あ、私はここでアルバイトをしている、キクチです。そのままね、菊に池」
「はあ……」
「それで金田一くん、もしかして、この人に……」
「そうっす、おすすめのカクテルを……」
曖昧な返事をしてしまったのにも関わらず、笑顔を絶やさないその人は、金田一の言葉で、目の色を変えた。
「きみ、カクテルに興味あるの!?」
…………いや、そういうわけではない。
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作者名:ふいぁさ | 作成日時:2018年10月27日 7時