29話(過去のお話22.5話) ページ30
ヴィクトルside
会場に入ったときから緊張しているAは、2連覇王者のスケートを見て更に緊張したらしい
Aの背中を押してみたものの、その表情は更に険しくなっている
何とかしてAの緊張を解そうと思い、「Aー!ガバーイ!!」と叫んだ
氷上をゆっくり滑っていたAは、俺の声に驚いたらしく目を見開いて此方を見た
そんなAに笑いながら手を振る
数秒後、Aの目を見つめ「大丈夫!」と念じるように頷いた
ハッとした表情をした後、下を向き伏し目がちにゆるりと笑い、再び視線を合わせて頷き返すA
気持ちは伝わったらしい
険しい表情が消え、キリッと引き締まった表情に鋭い光を宿す目
一瞬でAの雰囲気が変わった
一度強く氷を蹴ってリンク中央へポーズを決め立つA
一拍遅れて曲が流れ出した
ピアノの静かで複雑な音色と、緩やかなヴァイオリンの音色が
穏やかで、それでいてどこか緊張感を感じさせる曲
場面毎(ごと)にペース(雰囲気)が変わるその曲は、演じるには少し難しい
それでもAは、この曲が作られた情景を見ていたかの様に絶妙な演技で滑っていく
黒に近い紫の衣装が、色素の薄い彼女の髪や肌の色をより際立たせている
情景が変わる度に時折見せる柔らかい微笑みが、指先まで洗練されたように動く腕が、力強く氷を蹴り風を切るその足が
Aという存在が、この会場に居る者達全てを魅了している
当の本人はその事に気づいていないのだろうけれど
最後のトリプルアクセルを成功させ、ポーズを決める
一瞬静まり返った会場が、割れんばかりの拍手で埋め尽くされた
ノーミスで滑りきったAの得点は158.2点
2連覇王者を押さえて堂々の1位
点数を見てもまだ信じられないのか、Aはポカンとした顔で電工掲示板を見ている
と、授賞式のアナウンスが流れた
ヴ「Aー?ほら、呼ばれてるよ。ゴーゴー!」
と言って背中を押すと
A「ヴィッ、ヴィクトルっ、私1位って(汗)」
…どうやら軽くパニックになっているらしい
ヴ「そうだよ!Aが1位!Aの演技、凄かったもの!」
と、どさくさに紛れて抱き締める
背中をポンポン叩くと、落ち着いてきたらしい
と思ったのもつかの間
A「うぇ〜ん…ヴィクトルゥゥ〜(泣)」
と、泣きながら抱き締め返してくるA
そっと涙を拭うと「行っておいで」と背中を押してやる
まだ潤んでいる目で「うん」と言って駆けて行ったAの姿を見て、静かに微笑んだ
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咲牙リウ(プロフ) - ミケ猫さん» ミケ猫さん、コメントありがとうございます。中々更新出来ず仕舞いなので、忘れた頃に覗いて頂ければ幸いです<(_ _*)> (2018年8月25日 8時) (レス) id: 7e20db5d80 (このIDを非表示/違反報告)
ミケ猫 - 星10付けようとしたら、連打しすぎて7くらいの所押してしまった〜(>_<)あ、とっても面白かったです!更新楽しみにしてます!! (2018年8月9日 23時) (レス) id: bc2dec00f2 (このIDを非表示/違反報告)
咲牙リウ(プロフ) - うぉっちゃ。さん» うぉっちゃ。さんコメントありがとうございます。製作の時間ができ次第更新していきますので、忘れた頃に覗いていただければと(笑) (2018年3月13日 19時) (レス) id: 7e20db5d80 (このIDを非表示/違反報告)
うぉっちゃ。 - 続き待ってます! (2018年3月12日 21時) (レス) id: db12cc2b85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:咲牙リウ | 作者ホームページ:http://bokuranosusumusakinihananigaarunoka
作成日時:2017年1月5日 20時