車窓からの景色２ ページ48
Aside
いったいどこへ向かっているのか、ここはどこなのかなんの返答もないまま時間だけが過ぎてゆく。
車窓からの景色は相変わらず騒がしい緑の木々だけ。
まだ外が明るいことが幸いしたのか、不気味さはそこまで色濃くない。
「私、目的地なんて答えたんだろう」
現在地を知るため、スマホの電源を入れようと何度も電源ボタンに手をかけるが、メンバーからの追及のほうが恐ろしく電源は付けられないままでいる。
貴「あの、そろそろおろしてください、もうここらへんで大丈夫なので」
やっとの思いで出た言葉に運転手はピクリと眉を動かし
運「今ここで下ろしたとしても、交通手段ありませんよ」
と口を開いた。
「何とかします。なので下ろしてください」
という言葉が喉元まで出かけたが、交通手段がないという不安のほうが勝り黙り込んでしまう。
またシンとした空気が流れるなか、運転手が声を発した。
運「あの、少し私の話を聞いてくれませんか？」
その言葉にはじめは何を言っているのだという疑問を抱いたが、声色からなぜか人間味を感じ沈黙が1分ほど続いたのちに
貴「はい」
と答えた。
運「ありがとうございます。実は私、昨年妻と娘を亡くしたのです。」
突然始まる重苦しい話に空気が凍り付いた。
しかし、それも気に留めず運転手は続ける。
運「妻は娘を命がけで出産してそのまま、娘は未熟児で保育器で育てられていたのですが、徐々に回復していき何とか退院までこぎつけた矢先でした。」
運「原因不明の心不全。そのまま帰らぬものとなってしまったのです。一つ残された希望のヒカリから一気に絶望の果てに追いやられた気分でその時は正直生きている意味すら分からなくなりました。」
運転手の話になぜだか引き込まれ、ただ静かに相槌を打った。
運「そんなときにね、出会ったんですよ。」
貴「え？」
そのあと運転手はまた黙り込んだ。
しかし、少しするとエンジン音が静まり先ほどまでの小刻みな揺れがなくなった。
ああ、車が止まったのか。
運「窓の外、見てみてください。」
そういわれ目をやると、そこにはキラキラと輝く水面に何羽ものカモメが飛び交う風景が見えた。
運「美しいでしょ？これを見て自分の中で止まったと思い込んでいた時計の針がゆっくりと動き出した気がしたんです。」
運「この世界は私ひとりじゃないんだ。前を向かなきゃと」
私は目の前に広がる景色に息をのんだ。
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ちゃー(プロフ) - カノンさん» 初めまして！とてもうれしいお言葉ありがとうございます涙 現在続きを絶賛製作中でございますので今しばらくお待ちいただければと思います！！今後ともよろしくお願いいたします：） (2020年5月17日 19時) (
レス) id: f469e5018d (このIDを非表示/違反報告)
カノン - 初めまして！！すごく内容が面白くてすごくひきつけられました！！いまさらなですが、このお話の続きは出さないのでしょうか？？ (2020年5月17日 19時) (レス) id: dd8ccad5c6 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃー(プロフ) - しらたまさん» ありがとうございます涙 これからもどうぞよろしくお願いします！！ (2018年9月11日 13時) (レス) id: 393919ca01 (このIDを非表示/違反報告)
しらたま(プロフ) - はじめまして！全部読みました！すっごい面白かったです…！これからも応援してます頑張ってください(*'▽') (2018年9月10日 22時) (レス) id: 04ec2ee818 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃー(プロフ) - Monoさん» そう言ってもらえてうれしい限りです！これからもどうぞ『That's My Girl』をよろしくお願いいたします：） (2018年4月29日 10時) (レス) id: f469e5018d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちゃー | 作成日時：2018年2月27日 18時
