キリトリ

送り狼にはならない 3 (玉藻)(現代パロ) ページ28

玉藻先輩に腕を引かれて飲みの席に戻ると男性の大方が出来上がっていた。そして女の子はチラホラと帰宅済みであることが分かる。

「Aさんの荷物、取ってもらっていいですか？」

「…ほらよ」

取ってくれた人はどこか不服そうだ。玉藻先輩は自身の財布を取り出し一万円札をテーブルに置くと私の腕を引き店の前にあったタクシーに乗り込んだ。

「とりあえず童守駅までお願いします」

そう伝えるとどこで買ってきたのか冷えたミネラルウォーターを私に差し出してくる。

不意に膝に置かれた手を見て思考をめぐらせてみる。いやちょっと待って、今私の隣にいるのって大学一イケメンと名高い玉藻京介先輩なんだよね…？これって月曜日に女の子に刺されたりしないかな？玉藻先輩だってキラキラ女子とお話ししてたのにこんな冴えないちんちくりんをタクシーに乗せるなんて！

「…うぅ…。ごめんなさい、玉藻先輩…あたひが酔ったばっかりにぃ…っ、ごめんなさい…」

涙がポロポロと溢れてきた、なんでこんな気持ちになるんだろう。途端に申し訳なくなっていても立ってもいられないのだ。むしろ生きててごめんなさい。

「泣かないでください、化粧が崩れます」

「…このファンデーション、汗かいても落ちないんです…凄いでひょ。その話を女の子としたかった…うっ、んん…」

あれ、何の話だっけ。玉藻先輩が私の涙をハンカチで優しく拭ってくれる。膝に置かれた手は鼓動に合わせてリズム良くトントンしてくれた。そして気がついた時には見知った公園のベンチで玉藻先輩に膝枕されていた。

「やっと起きましたか」

「…んん？」

びっくりしてなるはやで隣に座り直し謝ると先輩は私の髪に指を通しながらふふっと笑った。

「家、この辺だと言ってましたからね。ここからは一人で帰れますか？」

「…玉藻先輩の家ってここから遠いんじゃ…？」

時間的にも電車はもうないのに、と言えば困ったように眉を下げて酔っ払いの前でくらいカッコつけさせてくれ、と頭を撫でられた。

「ウチお布団二個ありますけど」

来客用ので実家から持ってきたのがワンセットあるから玉藻先輩が泊まるくらい雑作ない。むしろここまで送ってくれたのに帰れなんて酷いだろう。

「…Aちゃん、酔った勢いでものを言うのはやめなさい。そういうのはもっと…」

玉藻先輩は呆れたように色々言っていたがそこで言葉を切った。

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