陽が落ちるとき 4 (鵺野) ページ25
「…A、大丈夫か？」
聞き覚えのある優しいその声に安堵したとともに、目を覆っていた涙がさらにドバドバと溢れ出し、ついには声を上げて泣いてしまった。身体を抱きしめて背中をさする大きな腕は何ものにも形容しがたい程に温かい。
「奇妙な妖気を漂わせてたからつけてきて正解だったな。あれはがしゃどくろだ。もとは綺麗に埋葬されなかった遺体が妖怪化したもの、墓荒らしにあった遺骨が同じように妖怪化したんだろう」
ぬーべーは丁寧に解説してくれるが正直そんなの聞いてないしどうでもいい。そのがしゃどくろとやらに気をやりながらも私が落ち着くまでギュッと抱きしめて宥めてくれるその腕の中が心地よい。
「ありがとうございます…死ぬかと思いました…」
肩がビシャビシャになっているにもかかわらず、もう安心しろ、と頭を撫でてくれるぬーべー。私を抱きしめたまま経文をがしゃどくろに巻き付けると真剣な声でそれを読み上げた。
「南無大慈大悲救苦救難広大霊感白衣観世音、亡者の魂よ、眠たまえ！」
おおぉぉぉ…と物々しい声を上げながらそれは経文の中で霞になって消えていった。妖怪化したとはいえその魂は冥土へ行くのだという。落ち着いてきた脳みそで鬼の手で切り裂かない妖怪もいるのだと考えた。
五年生にもなって、人様の肩をネチョネチョにするまで泣く日が来るなんて思わなかった。ぬーべーは対して気にしていないようだが今になって申し訳なさと恥ずかしさが昇ってくる。私は思わず顔を手で覆った。
「助けてくれてありがとうございました……あの…恥ずかしいからあんまり見ないで欲しい、です…」
顔は死ぬほど真っ赤だろう、耳も熱い。ぬーべーは悪戯をするように「ん？」と私の右手を掴んで退かす。嫌だと顔を逸らすが意地悪な顔をしたぬーべーはついには両手を掴んで覗き込んできた。流れてきた涙は恐怖ではなく羞恥心が理由だろう。
「しっかり者のAがそんな顔するだなんて、先生いいもの見れたな！」
そう笑うぬーべーの顔が涙で歪む。もう勘弁してくださいと懇願すると悪い悪い、とその手を解いてくれた。
「Aが俺の名前呼んでくれて嬉しかったよ。学校の中じゃあんまり頼ってくれないからな」
ぬーべーは立ち上がると私の荷物をもって家の方面へ歩き出す。
「もう暗くなったし、今日は特別に家まで送って行ってやるか！」
そう言った矢先、犬のフンを踏みつけた大きくて情けない背中も今はかっこよく見えた。
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麻衣(プロフ) - またリクエストお願いします！ぬーべーの一目惚れ設定で最初はあしらう夢主だが最終的に恋仲になる感じを書いて欲しいです (9月17日 23時) (
レス) id: 95b948b8ab (このIDを非表示/違反報告)
麻衣(プロフ) - リクエストありがとうございます。またまたリクエストお願いします。鵺野鳴介で夢主が妖怪に襲われて助ける話を描いて欲しいです！ (8月29日 19時) (レス) id: 95b948b8ab (このIDを非表示/違反報告)
アース(プロフ) - 麻衣さん» リクエストありがとうございました！鵺野先生との関係性に悩みましたがか、内容に入ってしまえば楽しく執筆出来ました😆またリクエストお待ちしております！ (8月27日 4時) (レス) id: c8585e79fa (このIDを非表示/違反報告)
麻衣(プロフ) - またまたリクエストお願いします。鵺野鳴介で無理矢理は大丈夫ですか？ (8月19日 20時) (レス) id: 95b948b8ab (このIDを非表示/違反報告)
麻衣(プロフ) - アースさん» ありがとうございます！ (2022年3月4日 2時) (レス) id: d944f1cd48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アース | 作成日時：2021年8月29日 0時
