〈３１〉 ページ22
私はもう一度実家を訪ねる事にした
特急列車に乗り込み移り変わる風景を眺めた
時折、貰ったコンパクトを開いて自分を見つめた
私には家族も姉弟もいる
金狼とは違う
一歩間違えたら私だって金狼のようになっていたのかもしれないし
そう思えばどこかで運命の歯車というものが帳尻を合わせたんだろう
なんて考えたり
そうこうしてると実家の最寄り駅に着いた
交番に顔を出して挨拶をした
それから実家への山道を昇った
家に着いて中に入ると以前と変わらない風景だった
ビデオテープを見つけた床もそのまま
荒れ果てた部屋もそのまま
お父さんの書斎があって
金狼と銀狼の寝るベッドがあって
埃だらけの本を手に取った
フーっと息を吐くと金狼がよく手にしていた本だった
「こんなの…あったなあ」
私はもうここに来ることも無いのだろうか
いつかここの事も忘れてしまうのかな
お父さんの書斎のデスクの引き出しを開けると当時の日誌を見つけた
金狼は至って正常
銀狼は不安定
常にその文字が並ぶ
この言葉はどれだけ2人を苦しめたのか私には分からない
私はペラペラとめくると銀狼が暴れていた日のことが書いてあった
【日誌】
今日はいつも以上に銀狼が暴れていた
とてもじゃないが疲労感が募る今日この頃
暴れる銀狼をAはどこでも追いかけ回して嫌がられようと手を出されようと必死になって抱きしめていたことが印象深い
近頃手を出されても交わす能力がAに備わってきた
彼女のIQテストはまだ試みてはいないが、金狼、銀狼に次ぐ天才児に間違いはないだろうと考えている
2人のIQ220に近いものだが…素晴らしい人材だ
お父さんの日々の苦労と苦悩が混同する日誌
たまに出てくる私の話
お父さんはみんなを見ていたんだな
私にはそう感じた
ただ、見方はそれぞれ違う
完成形のバケモノ
失敗作の心を持った子
そして拾われた女の子
ひとしきり見て回って家を出る時に玄関でお辞儀をした
「今までありがとうございました」
私は麓に降りるとすぐに来た電車に乗って東京に帰った
東京に帰ると直ぐに金狼が爆破した廃工場にやってきた
そこは跡形もなく瓦礫の山だった
辺りは暗くなってきていて薄気味悪さもあった
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月神 - 銀狼怪奇ファイルが好きなので日常をあげてください。このお話は面白いかったです。 (2022年8月8日 13時) (
レス) @page28 id: f57203fe40 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：am. | 作成日時：2022年2月23日 10時
