【stpr】彦星の裏切り 【赤】

１４話 【絶望】 ページ15

ガチャ！バタンッ！




『はぁ…！はぁ…！はぁ…！』




気のせいなんかじゃなかった…！




あれは…あの腕は…




女の腕だった…！




抱きつくように莉犬くんを電車中に引っ張っていった




誰？私の知ってる人？




分からない…分からない分からない!!




『はぁ…！あぁ…！うぅ…！はぁ…！』




分からない、教えて、応えて、説明して、否定して、忘れさせて




『うぅ…あぁぁ…うぅぅ…！』




何も考えられない、涙で何も見えない、自分の泣き声で何も聞こえない




私…捨てられるの？莉犬くんに飽きられちゃった？




ごめんね…ごめんなさい…




『ごめんなっ…さいっ……！』




夏の太陽が高く登り、蝉が鳴き叫ぶ中




私は部屋で…









絶望していた…









ーーーーー
あかねside

『おはようございま〜す!!』




社員達「おはようございま〜す！」




あれ？Aはまだ来てないのかな？




自分のデスクに座って仕事を始めると、視界の端にあった扉が開いた




『あっ！Aおはよう！』




A「おはよう…」




えっ…




『ど、どうしたの？そんなに…』




私はAの手を取り、お手洗いに向かった




ーーーーー
『A、何かあったの？私に話せる？』




A「あ…り…あ…」




震えてる…




おかしい、髪も乱れてて、顔もやつれてて、声も身体も震えていて




何があったの？




『ゆっくりで良いよ』




そう言ってAの頭を撫でる




すると少し落ち着いてくれたのか、視線を上げて私を見た




A「ありがとう…あのね…」




私はAから出る泣き声混じりの訴えを、一言も聞き逃すことなく聞いた




そして…




失望した…




私は泣き声を上げるAを抱きしめた




意味がないかも知れないけど、頭を撫でて宥めるように言葉をかけた




どうして…




どうしてよ…彦星(莉犬くん)…




どうしてAを泣かせるの？傷付けるの？




Aが…どんな想いで会社まで来たかっ…！




少しずつ怒りが出てくる




あんなに誕生日が来るのを楽しみにしていた、そんなAを見て私も嬉しかった




それなのに彦星は…









Aをうらぎった?









A「ありがとうあかね…もう大丈夫」




Aがゆっくり私から離れる




『分かった』




その後仕事に戻ったけど…




Aは殆どの仕事が手につかなくなっていた

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