わんだふるでいず (ページ10)

今日:2 hit、昨日:4 hit、合計:96,152 hit

最後の春ページ10

・

2019年5月19日

私はその日、新橋演舞場にいた。

既に幕は上がってる

出演者たちはもちろん、座長たちにも内緒

関係者入口から中に入ると滝沢くんが待っていた

「おはようございます。千穐楽おめでとうございます」

「おはよう、無理言ってすまないな」

「いえ、これくらいなら」

少しだけ言葉を交わして急いで用意された楽屋へ

メイクをして、衣装に着替える

天女をイメージさせるような中国古代衣装をモチーフにした衣装は

薄い桃色でまるで桜のようだなと思った

そーいえば今回のテーマは"桜"って言ってたっけ

髪型どーしよっかなって思ってると

「なる」

と声をかけられ思わず後ろを振り向く

そこには

「はなさん…」

まだ事務所にいた頃、ずっとそばに居てくれたマネージャーの花咲さんがいた

「髪の毛私にやらせて？」

「いいの？」

「もちろん、とびっきり可愛くするからまかせて！」

久しぶりのはなさん

前はあんなに一緒にいた人なのに、どうも緊張してしまう

「…ごめんね、守ってあげられなくて」

不意にはなさんが呟くようにいった

「……ううん。はなさんは十分守ってくれたよ。ちょっとだけ私たちと事務所の方向性が食い違っただけ。誰も悪くないの」

Jr.の分際で、ファンのみんなに退所報告させて貰えただけ事務所は優しかった

「もう一緒にお仕事はできないかもだけど、ご飯くらい行こうね」

「そーね、ふふ、でーきた！可愛いわよ」

化粧台の鏡には、サイドに作った三つ編みで輪っかを作った中華風の可愛い髪型をした私

・