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ただでさえ口数の少ないAから、"家族"という話題は1ミリだって出たことがない
凍りついた教室は、しんみりとしたような、哀愁に帯びた空気に包まれていた
「ご、ごめん」
俯き気味にそう零した佐倉を一瞥することもなく、Aは本を片手に教室を出ようと立ち上がる。磁石の同じ極同士が弾かれるようにAが歩く道が自然に開く
「そっ、そうだ!」
わざとらしく手を叩きながら、飛田が声を発した。この言い様もない空気をどうにかしようと思ったのだろう
「体質系の説明してなかったよねっ! た、体質系は『パフォーマンス祭』っていうのがあって、演劇やバンドとかするんだ!」
「そっ、そうそう! フェロモンとかアクション向きのアリスの奴多いしなー」
実に、実にわざとらしい。しかし佐倉の顔が輝いたことに様子を見ていた者は安堵する。助かった、と
佐倉とAのドッペルゲンガーズ(仮)が転入してきてからというもの、こういうことが度々起こる。佐倉が一向に成長しないのも原因のひとつだ
「あと、『特力』は」
「退いてください」
飛田と被った言葉。Aの声がした、入口の方に注目する
何故かそこには、中等部の男子生徒が3人。教室を出ようとしているAの前に立ち塞がるようにしていた
「あっ、君トリプルの美人の子。久しぶり〜。こないだ倒れちゃってたから心配してたんだよねー」
3人のうち最も背の高い男子生徒が、そう言ってAの肩に手を伸ばす。ばしっとそれを弾いたA。彼女の目にはら威嚇する猫のような警戒の色に染まっていた
弾かれた手を一瞥した彼は、なおニコニコと笑顔を崩さない
「「あっ あの人」」
今度は、佐倉と飛田の声が被った。2人は顔を見合わせて瞬きをする
「知ってるん?」
「うん。潜在能力系の先輩だから」
「そうなんや。あの人、前にAに酷いことしてな」
「……っ、特力系なんか!」
Aと退治する後から、いかにも、自分に気づけと主張するばかりに張り上げられた声がした
「特力系なんか、さして取り柄もない不人気No.1クラスだよ」
睨みつけるAを無視し、カツと音を立てて教室に足を踏み入れる
「変人・落ちこぼれの寄せ集めクラスだし当然の結果だがな」
「あ」
いかにもカッコつけたように腕を組みながら寄りかかったその生徒は――
「お前あん時のイヤミワカメ頭ーーっっ」
と、セクハラ男×2!!! と先輩にも関わらず指をさしてそう叫んだ佐倉
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ミア(プロフ) - 水乃 夜空さん» コメントありがとうございます! わーい同じ人いた!嬉しい!私も家にいすぎて日頃親から色々言われるので、今の状況すごく楽です() (2020年4月20日 23時) (レス) id: 8a7216d57f (このIDを非表示/違反報告)
水乃 夜空(プロフ) - それなです!wインドア派は、出なくてもストレスたまんないでw逆に外でろって言われなくて、ある意味楽(((( (2020年4月20日 1時) (レス) id: 2b2a41cc61 (このIDを非表示/違反報告)
稀紗(プロフ) - 最初は綾瀬ちゃん着いてかないんだ、綾瀬ちゃんらしいなって思ってたんですけど、最終的にテレポートして、助けに行ってあげるとかカッコよすぎです!綾瀬ちゃんの謎が気になる...w (2020年4月16日 2時) (レス) id: 2b2a41cc61 (このIDを非表示/違反報告)
ミア(プロフ) - 稀紗さん» コメントありがとうございます!!誘拐事件の内容はずっと前から温めていたものだったので楽しみながら書いてます^^ かっこいいと思ってもらえて嬉しいです。更新頑張ります!!! (2020年4月16日 2時) (レス) id: 8a7216d57f (このIDを非表示/違反報告)
稀紗(プロフ) - 初コメ失礼します!綾瀬ちゃん、カッコよすぎです!更新楽しみに待ってます! (2020年4月16日 1時) (レス) id: 2b2a41cc61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミア | 作成日時:2019年5月28日 0時