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逃げるな。その言葉は、じわじわと己の頭を蝕んでいく

顔を上げた宇佐美は、犯罪者のわりには真っ直ぐな目をした瞳に映る自分を、ぼうっと見つめた


────なんで、アンタが泣いてるの?



「そうやって大声で、拒絶して………誰の声にも耳を貸さずに、生きてきたんだな

そのせいで……あんなバカな真似をしても何も感じない人間になったんだな」

「………なんでアンタにそんなこと言われなきゃいけないの?」



彼の目が、少し、少しだけ、柔らかくなった気がした





「俺は…………お前の"教師"だからだ」





唇を強く噛んだ

カーディガンの裾を、強く握った


もういない"あの人"が、頭をよぎる





「お前を正しい道に、導く義務がある」





───正しい道なんて、もう分からないのに





「ふざけんな……っ!!!!


今までなんにもしてくれなかったくせにっ!!!」



感情をぶつけるように前にある机を押し退け、思いのまま叫ぶ



「そうだ、だからだよ

だから俺は、今、この瞬間にお前達の教師になるために……ここにこうして立ってるんだ」



後ろにいる生徒達も、ただ黙って柊のことを見ていた


どうしてだろう。犯罪者のくせに、この人は、この先生は、綺麗事ばかり並べている

けれどその綺麗事は、嫌味なことに、すっと……心の中に入ってくるのだ




「宇佐美。お前に足りなかったものは……想像力だ


もし、自分の家の窓を割られたら、自分の服を切り裂かれたらどんな思いをするのか……

嘘の投稿でいわれのない中傷を受けたらどれほど傷つくのか……」



罪悪感から身をよじるように、顔を覆った宇佐美は、くしゃりと前髪を握る



「お前にはその痛みを、想像できなかったんだ」



「うるさい!うるさい!うるさい!!うるさいっ!!」



そう叫びながら耳を塞いぎ、耐えられないとしゃがみ込んだ宇佐美

そんな状態の彼女に近づいた柊は、耳を塞ぐ彼女の手を退けて、涙でぐちゃぐちゃになった顔を背けることがないように両手で包顔を上げさせた



「よく聞け」


小さな子供を落ち着かせるようなその声は、優しいものだった



「景山は、お前を恨んじゃいなかった。寧ろ、自分のせいだって言ってた」







『私がいけないの』

『何も言わずに香帆を拒んで……ちゃんと、伝えていればよかった』








「『私は、香帆と、本当の意味での友達になりたかった』って……そう言っていた」


絶えず涙を流す宇佐美の肩に、彼は手を置いた




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ミア(プロフ) - あんず飴さん» うわああめちゃくちゃ返信遅くなってしまったほんっっっとに申し訳ないです!!!コメントありがとうございます!!!! (2019年8月31日 20時) (レス) id: 8a7216d57f (このIDを非表示/違反報告)
あんず飴 - 柊先生落ちがいいです!! (2019年4月21日 18時) (レス) id: e9a1259486 (このIDを非表示/違反報告)
ミア(プロフ) - イツカさん» コメントありがとうございます!何気に柊先生リクエストは初めでです笑更新頑張ります!! (2019年3月10日 16時) (レス) id: 8a7216d57f (このIDを非表示/違反報告)
イツカ(プロフ) - 柊先生がいいです!更新頑張ってください! (2019年3月10日 16時) (レス) id: b93db8aef6 (このIDを非表示/違反報告)
ミア(プロフ) - 美桜さん» コメントありがとうございます!真壁くんイケメンですよねまじ惚れます笑 (2019年3月9日 21時) (レス) id: 8a7216d57f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ミア | 作成日時:2019年1月7日 0時

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