【3年A組】天秤に掛けるのは

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「もし女子がやったなら、犯人は茅野じゃない？」



頬杖をつきながらそう零した水越

反射的に「へっ？」と間抜けな声を漏らしながら振り向いた茅野は、理解が追いついていなかった



「だって澪奈のことずっと追いかけ回してたじゃん」

「確かに。1番奴 隷が当てはまる」


「…いやいや、私じゃないから」




そう茅野が否定しても



「否定すれば否定するほど怪しいよね」



辻本の言葉に、周りにいる女子が頷く

空気は、茅野が犯人という方向に流れていってる





"発言力"

カースト上では、圧倒的に水越が茅野よりも上

それに加えて昨日の今日である。文字通り、今だけに限らず、茅野に拒否権なんてない








けれど、本当は茅野じゃない。そう頭では分かっているAでも、流石に彼女を庇おうと発言する気にはならなかった


(巻き込まれるの、嫌だし)


ハッキリとそう思ったことが、いけなかったのか







「私は蒼井さんだと思うけど」






花岡の声が教室に響き、一気にAに注がれる視線

自分が疑われていたということが頭の隅に追いやられていたAは、肩を揺らし目を丸くする




「…まぁ、確かにさっきのぶっきーに呼ばれたやつは怪しかったけど……」

「もし仮に蒼井がやり逃げXだとして、ぶっきーに呼ばれる必要はどこにもないんじゃない？」




真壁に続けてそう言った里見

かっと顔を赤くした花岡は、だって、と声を荒らげた



「全国レベルの蒼井さんよりも景山さんの方が知名度高くてチヤホヤされてるから、嫉妬して嫌がらせしてたんじゃないのっ！？」


「違う」




顔を上げたAは、花岡を見ながらそう言った

焦りも何も感じられないその無表情さに、花岡は身を強ばらせる







「…でも、一理あるよ、沙良の言うこと」



黙り込んでしまった花岡をフォローするように、隣にいた秋庭がそう言った

それに頷いた結城も、「私も沙良に賛成」と言う



「女の嫉妬って怖ぇもんなぁ〜」

「女子全員そうみたいな言い方しないでよ」


「でも確かに蒼井さんってよくわかんないとこあるし」

「実は裏でやばいとかありそうだもんね」






空気は、茅野からAへと、変わっていく








『___はそんなこと絶対しないっ!』







(やだなぁ)




カーディガンごとぎゅっと拳を握り締めたAは、下を向く



1つの言葉が、大きな波紋を作る





(私が、1番分かってる)





＿＿＿だから、今まで大人しくしていたのに

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