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「…本当に、帰ってこれたんだ」
目の前に広がる見慣れたはずの自分の部屋が、何だか新鮮に感じた。
あの後は、皆で宴のようなものをした。
8人で語り合い、最終的には弟者さん以外の人が酒の飲み比べを始め、殆どが酔いつぶれた。
弟者さんとお酒に強いらしい兄者さんと標準さんが、他の人を連れて行き、私も帰らせてもらった。
「…ほんの二日程だったのに、なんだか長く感じたなぁ」
そんなことを呟き、ディウルお姉さんが残していった押し花を、無くさないよう自分の魔導書の一番前のページに挟んだ。
その時、自分の部屋の窓が風によってガタガタと音を出した。
「あれ…風なんて吹いてたっけ…?」
そう言ったとき、窓から誰かがノックをした。
今まででそんな所からノックする人なんて勿論いなく、少しどぎまぎしながらゆっくりと窓の戸を開ける。
「お、弟者さん?」
顔を覗かせてきたのは弟者さんだった。
先程の風は彼が飛んできたからのようだった。
「…A、今から少し出られない?」
「え、まぁ…さっき寮監の見回りも終わったので…」
よし、じゃあ行こうか。
そう言って私の手を優しく握り、私は窓から飛び出た。
歩いて行くと、着いたのは私と弟者さんが初めて出会い、そして、おついち先生と三人で私の魔法練習で何回も訪れた森だった。
森に入って少し歩くと、見慣れた岩が見え、二人でそこに腰掛けた。
「…」
お互い無言のまま、ただ手を繋ぎあっていた。
正直、私の心臓は驚くほどの心拍数で、弟者さんに聞こえてしまうのではないかと思うくらいだった。
あぁ、知らぬ間に私は、弟者さんを想っていたんだな。
うるさいほどに響く鼓動に、嫌でも自分の気持ちに気付かされた。
「A…俺さ、すごく怖かったんだ」
「怖い…?」
弟者さんは私の手を若干強く握った。
それに気づいた私は反射的に彼を見た。
「Aがディウルに連れ去られるとき、自分の伸ばした手が届かなくて、一瞬だけ、もう君に会えないって思っちゃってさ、すごく不安になった」
「弟者さん…」
「でも、今日またAに会えた、触れることができた…それで俺、わかったよ」
何がわかったのか私にはわからなくて、首を傾げた。
すると弟者さんは私の目をしっかりと見つめ、指を絡めたあと、こう言った。
「俺は、Aに惚れてるんだ、って」
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作者名:Sky | 作成日時:2017年9月9日 19時