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"そろそろ彼等が来ます…部屋に戻って…"

声が聞こえ、私はゆっくりと深呼吸をして、彼に話した。

「…兄者さん、私は弟者さんの今の姿を否定しません、弟者さんの今の姿が、私にはとても輝いて見えるから」

自分が今伝えたいこと、それを兄者さんに言う…それが今の私にできることだから。

「私も…貴方がダンタリオンに操られていたとしても、それを覆して、必ず貴方をここから出してみせます」

兄者さんは顔を覆っていた手をどけ、ゆっくりとこちらを見た。
私は胸の前で拳を握り、目を見て話した。

「それで、また弟者さんにおついち先生…帰る場所に連れていきます!」

そう言うと、兄者さんの目が少し光った気がした。
彼は力なく笑い、言った。

「ありがとな…A」

彼はそのまま拳を突きつけた。
私はそれに答えるように、兄者さんの拳に自分の拳を当てた。

「また隙があれば、会いに来ます」

「あぁ…またな」

最後の言葉を交わし、私は歩き出し、重たい扉を開け通った。
声を聞きながら、私は来た道を戻る。
上手くアザゼルに見つからないように進むのもひと苦労で、こんなときに杖があれば、なんて思う。
そんな時、ひとつの扉が半開きになっていて、そこから光が漏れていた。
何となく気になった私は、その部屋を覗く。
そこには誰もいないけれど、光の原因は机の上においてある水晶のようなものだった。

「何だろう…これ」

何故か引かれるように無意識にそれに触れようとしたとき、急に加護の声が私に言った。

"待ってください!!"

その声に驚き、私は伸ばしかけていた手を引っ込めた。

「な、に…?」

"それは…"

光る水晶の正体を知っているかのように、加護の声は黙る。
それが気になり、加護の声に聞いた。

「これが何か知っているの…?」

"…これは、彼女の記憶です"

彼女、それはダンタリオンの記憶ということなのか。

「ダンタリオンの、記憶…どういうこと…?」

"この水晶は、ひとつの魔法道具…忘れたくない記憶などを脳から分裂させ、保管する道具です…そして、これは…"

そこまで話すと、声は急に黙った。
私はそのまま、加護の声に話してほしいと言うと、静かに言った。

"水晶の中には…随分と前の…貴女との記憶が入っています"

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作者名:Sky | 作成日時:2017年9月9日 19時

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