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*16* ページ17

「あと一人…かな…」

怪我している人全員を治癒し、日に当たらない所へ移動させていた。
もう私の魔力は元々そんなに残っていなかった為限界だった。
ふらつく足に力を入れ、あと一人運べていない人のもとへ向かっていた。

「死人は出ていないけど…怪我人が多かったなぁ」

乾いた笑いを溢し、最後の一人を移動させるために、自分の力では持ち上がらない為浮遊魔法を唱えようとした。
その時、不意に足に力が入らなくなり、私は転びそうになる。
衝撃が来るのを覚悟し目を瞑ると、倒れた感覚ではなく一気に浮く感覚がした。

「A、大丈夫!?」

目を見開くと、そこには弟者さんがいた。
薄っすらと額に汗を滲ませ、少し息はあがっていた。
衝撃がこなかったのは私を横抱きにし、しっかりと抱えていたからだった。

「弟者さん…すみません、魔力使いすぎちゃって…」

そう言うと弟者さんは周りを見回した。

「…怪我人全員を助けたんだな、そのせいだろ?」

「まあ、はい…」

あと一人は俺が運ぶから、そう言い彼は私を抱えたまま歩き出し、近くの大きい落ちた瓦礫を壁にし、私を座らせた。

「森の近くまで来たときに、Aの学校から煙が出てたから慌ててきたんだ」

何があった、真剣な眼で弟者さんは私を見つめる。
私は視線を下に向けながら、その名前を口にした。

「彼等…アザゼルが来たんです」

その言葉に、弟者さんは眉を寄せ目を伏せた。

「…Aは、何もされなかった?」

目を開け、今度は心配そうな顔をした。
私は微笑んで、何もなかったと彼に言った。

「隠れてたので、何とかやり過ごせました」

でも…と私はあの時何もできなかったことが少し悔しくて、弟者さんに不満をぶつけた。

「アザゼルが来たとき、何もできませんでした…魔法を安定させる為に一人で練習してて、それで魔力もそんなに残っていなくて…ただ先生達がやられていくのを黙って傍観することしかできなかった…」

何が力になるだ、何が守らないとだ。
ためになる前に私は何もできていないじゃないか。
悔しさに、無意識に爪が食い込むほど手を握り締めていた。

「A」

弟者さんの声に私はハッとした。
握りしめていた拳の上から、彼は優しく包むように手を添えた。

「下手に出るより、Aが無事でいてくれて俺は安心した、だから自分を責めないで」

彼の言葉に、私は目の奥が熱くなるのを感じた。
弟者さん…貴方は優しすぎる、そう思いながら、私は静かに目を伏せたのだった。

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作者名:Sky | 作成日時:2017年9月9日 19時

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