ある日迷いこんだ森の中で (ページ13)

今日:16 hit、昨日:6 hit、合計:96,127 hit

＊12＊ページ13

「おついち先生!」

校内を探し回ってやっと見つけたおついち先生に駆け寄り、息を整えるために胸に手を当て深呼吸をした。
不思議そうにこちらを見つめる先生に、私は少し大きな声で話した。

「魔法が上手く使えるようになる為に、授業以外の時…先生の時間があるときでいいんです!」

どうか私に教えてください、頭を深く下げながらお願いをした。おついち先生は、慌てた様子で頭を上げさせた。

「ちょ、Aちゃん急にどうしたの?」

「守りたい人を守る為に、もっと強くなりたいんです!」

私がそう言うと、おついち先生の目の色が少し変わった。

「僕の勘だけど…それは弟者くんのこと?」

真剣な顔で私に聞く。
私は弟者さんから過去を聞いたこと、兄者さんが幽閉されていること、全て偽りなく言った。

「…関わると、もしかしたら死ぬかもしれない…Aちゃんは確かに他の生徒よりも強い、でも君はまだ全てを扱いきれるほどの器は作れていない、まだこの先将来だってある」

確認するかのように、おついち先生は私の両肩に手を起きながら、私の好きな真っ直ぐな目で問う。

「危険だし、生きて戻れるかはわからない…それでも、君は自分の信念を貫ける?」

「はい、覚悟は疾うに決めています」

迷いのない目でおついち先生を見ると、彼は優しく微笑み頭を撫でた。

「本当は絶対ダメだと立場的に言わなきゃいけないんだけど…何だか君の目を見ると昔の僕を思い出すよ…」

「私だってもう21になるんですよ、子供じゃないです」

「僕から見ると、Aちゃんはいつまでも可愛い生徒だよ」

そう言っておついち先生は撫でる手を少し雑に動かした。髪が崩れます、そう拗ねても先生は笑って撫で続けた。

「今日の放課後、いつもの所で待ってる」

いつもの所、それは森の入口付近のこと。
他の生徒や教師にバレるといけないので、先生と二人でそう言うことにした。

「ちょっと他の生徒より贔屓目になっちゃうけど、内緒ね」

口の前に人差し指を置き微笑みながら言うおついち先生は、どこか少しだけ楽しそうに見えた。