【鬼滅の刃】偶然、または必然か・弍【ハンターハンター】

67話　最終選別へ ページ29

『炭治郎、頑張ってきてね』

「あぁ、今日も行ってくるよ｣



真剣を持ち歩いていく炭治郎の背中を眺めながら、物思いにふける


私が岩を切り、錆兎に会えなくなってから数日

炭治郎もきっと今日か明日には岩を切る


そうしたら私たちは...最終選別に行くのだ



『鱗滝さん、また針を借りますね』

「指を刺さないようにするんだぞ、気を付けろ｣



はーい、と返事をして私は作業に取りかかった

作っているのは最終選別に着ていく服だ


最終選別にはどうしても蜘蛛に居たときの服装で行きたかった

だから今は布を買い、自分で作っている


紺のピタッとしたタンクトップと、黒のスカート

スカートはパクとお揃いのものだった



『あの服も、思い出詰まってたのになぁ...』



涙が溢れそうになるも、ぐっと思い止まって目を擦る


私はもう泣かない

全てが終わるまでは、絶対に


余計な考えを振り払ってただただ手を動かす

しばらくすると、ドタドタと音を立てて炭治郎が走ってきた




「A！切れたよ、A！！岩が切れたんだ！！｣

『！...そう、おめでとう炭治郎』

「あぁ！これで二人で最終選別に行ける！｣



どうやら岩が切れたらしく、私の周りでぴょんぴょん跳ねた

頑張ったね、と頭を撫でてやるとものすごく嬉しそうに笑ってくる


...炭治郎も、錆兎のお面を切ったのだろうか


ふとそんな考えが頭に浮かぶも、その考えはすぐにかき消された


炭治郎の、一言によって



「そういえば、錆兎が男ならAを守れと言っていたな...俺の代わりに大切な人間を守れと｣

『錆兎が...？』

「うん、何処か安心したような、寂しそうな顔で｣



それを聞いたとたん、錆兎の複雑そうな声音を思い出した

「合格だ｣と呟いたときの、一瞬だけ見えた横顔が

あの、なんとも言えない瞳が


まるで今見てきたかのように鮮明に浮かび上がった



『そっ、か

　 じゃあ、錆兎にはたくさんありがとうって言わなきゃな』

「そうだな、錆兎にも真菰にもたくさん世話になった｣



大切、か...

錆兎は一体どういう意味で言ったのだろうか

自分が大切な人を守れなかったから、炭治郎は守れということだろうか

それとも、自分が今現在大切だと思っている人を守ってくれということだろうか


もし、そうなら

錆兎は＿＿＿＿＿＿


そこまで考えて思い直す

そんなこと、あるはずないよね


そんな考えは真実から目を背けただけのように思えて、なんだか不甲斐なかった

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