【鬼滅の刃】偶然、または必然か・伍【ハンターハンター】

番外編　冨岡という人(村田side) ページ37

「村田か」



俺が部屋をノックすると、平淡で静かな、透き通った声で冨岡が問う



「ああ。.....はい、水柱様」

「冨岡で良い」

「じゃあ冨岡、入るぞ」



俺は手に持った花を流星の近くの棚において、冨岡を見た


......少し、やつれている



冨岡は、つくづく苦労している

家族を鬼に殺され、最終選別で兄弟弟子を失った


俺たちと同じ年に最終選別を受け、その中で一番強く

その年で唯一受からなかった少年は、冨岡の友人だったのだそうだ



「.....流星、まだ起きないんだな」

「嗚呼」

「早く目を覚ますと良いけどな、皆心配してるし」

「嗚呼」



二三日に一度ここに来ている俺だが、最近冨岡はいつもこの調子だ


まあ、無理もない


失って失って、やっと上り詰めた柱の座

なのに、なによりも大切でなにより愛していた妹を、今、失うかもしれないのだ



.....流星は、本当にすごい

癸のときでも足はめっちゃ早かったし、上弦の参と渡り合っちゃったりして


きっと時期柱は流星や炭治郎だろう、と

ずっとそう思っていた



なのに起きない

唯一目を覚ました我妻も、ひどく思い詰めている様子だ



「冨岡、寝てないんだろ？夜は任務だし、朝は.......とにかく少し寝ろよ

　 その間、俺がここで見ておくから」



目の下にうっすらと熊のできた冨岡にそう提案するが、冨岡は小さく首を振った


コイツ、本当に死ぬ気か.....？


聞けば、飯すらほとんど食べていないというし、そのくせ睡眠もとらず任務に没頭する毎日

流星が聞いたら、血相を変えてご飯を用意することだろう......が



その流星は今、彼の目の前で眠っているわけで

流星が原因で、彼は不眠不休の生活をしているわけで




「そっか.....なら、俺は帰るけど

　 くれぐれも無理するなよ？起きたのにお前が倒れてたりしたら、流星悲しむぞ」




返事なし


いつもそうなのでもう慣れたが、ほどに返事は返ってこない

何を言っても上の空だし、目も決して合わそうとしない



胡蝶様じゃないが冨岡、そんなんだと本当に嫌われるぞ....


あのとき、錆兎という少年に「義勇を頼む」と言われたから

俺は何があっても冨岡を嫌ったりしない


だけど、な.....




「村田」

「な、なんだ？」



部屋を出ていく前に名前を呼ばれて振り返る




「俺はもう、遺書は見飽きた」

「....そうだな、俺もだ」




俺が、そう思いたいだけかも知れないけど


今確かに、″死ぬな″と言われた気がした

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