歴史を刻め ページ10
.
約束通り翌日二人には出陣をしてもらうことになった。
あの後水とタオルを渡しに戻れば二人で手合わせをしていて、戻ってきた私に気づくと「誰よりも強くなるからね」なんて宣言をしてくれた。
非常に頼もしい。何はともあれやる気を出してくれたみたいで良かった。
｢じゃあ、行ってくる…ねえ、やっぱりもう少し待って…離れたくないよ｣
｢絶対に本丸から出ちゃダメだよ。帰ってきたらまた爪紅一緒に塗りあおうね？｣
しかしいざ出陣となるとやはり離れ難いのか門の前まで来たはいいものの、二人から左右の手を力強く握られ「まだ行きたくない」やら「一人でどこも行かないでね」なんて言われた。仕舞いには「主も一緒に行こう」なんて言い続ける始末。
潤いだした瞳で見つめられても約束は約束。
それに二人には内緒だが、昨朝こんのすけ経由で政府から通達があった。
これ以上清光と安定が出陣を拒否し任務を怠るようであれば別の刀と交換してもらう、と。
私から離れるとなれば自意識過剰ではなく本当に二人は何をしでかすかわからない。何がなんでも、私を含め三人の為にも出陣してもらわなければならない。
｢わかったわかった。二人とも気をつけてね。怪我したら無理せずすぐに帰ってくるよーに｣
｢帰ったら、うんと愛してね？｣
｢俺のことも愛してよね？｣
｢はい、じゃあ鳥羽まで行ってきてちょーだい｣
また長くなりそうだなと思い二人をゲートに押し込んで戦場に行ってきてもらう。
やっと、鳥羽に進出だ。
清光がまだ1人の時に、離れたくないと出陣を嫌がるのをなんとか説得して宇都宮まで行ってもらった。
しかし安定が来て二人きりにさせまいと余計に出陣を嫌がり、それに伴い安定も嫌がるという負のループに陥っていた。
そしていつまで経っても鳥羽に進出しないことに痺れを切らした政府からお叱りを受けた、と言ってもこんのすけ経由なのでやんわりとだが。
とりあえず鳥羽まで行けば維新の記憶を制覇できるし、ひとつ任務を達成するからお咎めはしばらく大丈夫だろう。そう考えてしまう私は随分甘いのかもしれない。
｢よし、帰ってきた二人を美味しいご飯と共に出迎えようかなー｣
本当は八つ時には帰ってきて三人でお茶をしながらのんびりと過ごす予定だった。
しかし余りにも駄々をこねる二人を相手にしていたらいつの間にかその時間も遠に過ぎていて、どんだけ粘るんだよと時計を見て無意識にため息が出ていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 42人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：べべ | 作成日時：2020年11月18日 14時
