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「それじゃあ、鍛刀を始めようか」
「………」
清光(名前で呼んでとお願いされた)と二人で過ごして一週間。さすがに一人での出陣に負担がかかりすぎているので一ヶ月間は二人で過ごしたいと言っていた清光と話しに話し合って本日鍛刀をすることにした。
「資材も何やかんやある、ちゃちゃっといこうか」
「無理に使わなくていいんだよ?ねえやっぱり…」
「加州清光くん、男に二言はないんだよ」
「むー」
これ以上言っても無駄だと悟ったのか清光はふくれっ面のまま後ろから抱きついてきた。
非常にやりにくいけど、これで離れてと言ったら泣き出して寝込むのが目に見えるので黙っていることにする。
「とりあえずは大和守安定くんを狙う。まあ来てくれればいいねー程度の心持ちで」
「主と俺が鍛刀するんだから、あいつは必ず来るよ」
清光が言うなら、彼は来る気がする。
早速打刀が出やすいというレシピ通りに素材を式神さんに渡す。
「式神さん、よろしく頼みます」
渡す際にお願いをすると、任せろ!とでも言うように親指をぐっと出してきた。非常に可愛い。
「1時間30分。とりあえず打刀だね」
「手伝い札、使うの?」
「そーね、それもいいけど、清光くんが甘えたそうだからじっくり待つことにするよ」
「っ!へへ、主大好き!」
1時間30分の数字が出た時、清光がぎゅっとさらに抱きしめてきて息を呑んだ気がした。
大和守安定くんが来るかもしれない、会いたいけど、もし来たら俺は愛されないんじゃないか、って思ってるはず。
手伝い札を使ったらすぐに会える、けどこんなに不安そうな清光を目の前にしたら残り僅かな二人だけの時間を堪能したいと思った。
「ねえねえ、俺の爪、主が塗って?」
「君が塗るより下手だと思うよ」
「もー!主に塗ってもらいたいのー!」
「はみ出ても文句は受け付けないからねー」
「やった!じゃあ早く行こ!」
ご機嫌な清光に手を引かれて、塗るならやっぱり紅色かな、なんて考えながら部屋を後にした。
ちょうどお昼時だったので一旦腹ごしらえをし、清光とお互いの爪を塗りあったりと過ごしていくうちに、そろそろ時間かと鍛刀部屋へ戻った。
結果から言うと我が本丸に狙っていた大和守安定が来た。
顕現して、目が会った瞬間彼も清光と同じように「っ…逢いたかったよ!」と抱きついてきた。
そしてやはり私は沖田総司さんの生まれ変わりなのだとここで確信を得てしまった。
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作者名:べべ | 作成日時:2020年11月18日 14時