群青の懐かしい君 ページ25
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演習場に着き受付へ向かう道中、特定の刀剣達からありったけの眼差しを浴びた。
その視線を遮るよう清光と安定が前後についてくれたけど、どこか居心地が悪く顔を下に向けて歩き続ける。
突如、何かを被せられ視界が暗くなった。
驚きで顔を上げれば隣に山姥切が歩いていて、普段布で顔を隠しているはずの顔はさらけ出されていた。逆に、私の顔は布によって隠されている。
「それでも被っていろ。少しはマシだろう」
「え、いいの？山姥切が、」
「俺なんかの被っていた布が嫌じゃなければな」
「ありがとう、山姥切！」
極度に布を外すことを嫌がる山姥切なのに私のことを思ってその行動をしてくれたことに大変感動して、嬉しさのあまり体が喜びを抑えきれず駆け足で受付へと向かった。
「おえっ、」
そして私の体は久しぶりの人混みで人酔いをしたらしく、受付へ着く前に嘔吐感を訴え挫折した。
隅の方でしゃがみ込み、呆れる歌仙にお水を買ってくるようお願いをした。
「あるじさまっ、しなないでください！」
「え、嫌だよ！死んじゃ嫌だ！」
「主はん、それならせめて煎餅買ってからにしてくれません？」
「お、俺のせいか…？俺が、布を…」
「わー！山姥切さんが主さんになにかしたー！」
今剣の一言で取り乱しながら安定が私の肩を掴み揺らしてくる。そのせいで余計嘔吐感が込み上げ茶化す明石の言葉に反応できず、山姥切の言葉を否定できずにいれば乱も騒ぎ始めてしまった。
「違う、人に酔って、気分が悪い…」
「主君、お気を確かに！」
「ありがと、」
「吐きます？吐いちゃいます？」
なんとか否定の言葉と気分の悪さを訴えれば安堵の溜息が聞こえてきた。
背中を擦ってくれる秋田に力なく笑えば、何故か鯰尾が吐くかどうかを頻りに聞いてくる。
それに小さく頷けば「俺が主の世話を焼いてあげましょう！」とワクワクとした笑みを浮かべていて、嫌な予感しかせずやんわりと断れば残念そうに頬を膨らませた。
そして、これまで一言も発していなかった清光が急に立ち上がり私を見据えた。
「天ちゃん！今厠を持ってきてあげるから待ってて！」
何をするのかとその動向を見つめていれば、俺に任せろと言わんばかりの表情で安定の腕を掴み駆け出そうとしていた。
必死に二人の裾を掴み阻止していたせいか何とも騒がしくなってしまった。
なんだか余計に目立つ羽目になり、早く歌仙が戻ってくることを心から願った。
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作者名：べべ | 作成日時：2020年11月18日 14時
