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「私は、沖田総司として一度人生を終えた。君達には一度目のサヨナラに強くなって過去に囚われず二度目の人生を生きてほしい。大切な人との別れはすぐに立ち直れないし悲しみはなくならない。でも向き合うことはできる」
泣き続ける二人を慰める中、この話をしようなんて思ってもなかったが気付けばふと口に出していた。
顕現し出会ったその瞬間に「沖田くん」と呼ばれていた。自分の苗字だったのですんなりとその呼び方を受け入れられた。
だけど彼等のたまに呼ぶ「沖田くん」は、私ではなく沖田総司に向けた言葉だ。
私は私であって、沖田総司ではない。沖田Aとして生を受け今を生きている。
なぜ夢を見たのかわからない。もしかしたら沖田総司が私を通して二人に別れを告げに来たのかもしれない。
これを機に、二人と向き合おうと思う。
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どのくらいの時間沈黙が流れただろうか。
空気の読めない私のお腹が空腹を知らせた。とりあえず朝餉を頂こうと厨へ向かう事にしたのだが、泣きすぎて顔を真っ赤にした二人を見て先に顔を洗ったほうが良さそうだと思った。
「少しは落ち着いた？」
顔を洗い終わり厨へ行く時も、着いてもなお腕に縋りついて離れない二人に問いかければ、ずびっと鼻をすすりながらも頷いてくれた。
少し動きづらい中ご飯を握り、鳴り止まないお腹を満たそうと席についた。
「今朝、沖田総司の人生の一部を夢で見た」
遅めの朝餉を私だけが食べ進め話しを切り出せば、目の前に座る二人が濡れた瞳でこちらを見つめる。
「建物に乗り込み男の人と共に戦う最中、血を吐き出し倒れた。視界が暗くなり次に見たのは部屋の天井で布団の上にいた。君達二振りを胸に乗せて抱きしめようとした瞬間に意識が遠くなり、朧気の中二人の呼ぶ声が聞こえてきた。それに答えるように心の中で「サヨナラだね」と沖田くんは別れを告げたんだよ。そこで目が覚めた」
夢から覚めて現実に戻れば二人が肩口で泣いていて、夢の中の延長線なのかとなんとも不思議な気分だった。
「過去を振り向いても沖田くんはもういない。時の流れは止められないのだから今を進むしかないんだよ。沖田くんを理由に立ち止まってはいけない」
二人は強くなると私に言ってくれた。強くなるというのは技術面は勿論のこと、精神面でも強くならなければならない。
先のことを今あれこれ言っても仕方がない。ともかく、まずは過去と向き合わなければならない。
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作者名：べべ | 作成日時：2020年11月18日 14時
