巡り愛 ページ1
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剣道道場からの帰り道、カラスと目が合い私に向かって鳴くと飛び立っていった。
何だか嫌な予感がした。そしてそれが的中したかのように黒い車が何台か横付けされスーツを着ている大人達に囲まれた。
｢沖田Aさんですね？！｣
いきなり名前を確認された事に驚いたけれど、取り敢えず頷けば時の政府を名乗る一人に名刺を渡され、そこには��歴史修正主義者特別対策本部��と書かれていた。
聞いたこともないそれに怪しさが倍増していく。
「立ち話もなんですので車にお乗り下さい」とにこやかに言われたが、こんな怪しい人達について行くわけないだろうと心の中で悪態をつくと「御両親には了承を得ています！こちらが承諾書です！」と、若めの人が元気に紙を渡してきた。
確かに私の名前と両親の名前が書いてあるが、何故本人を抜きに変な了承をしたのか。
今すぐ紙を破り捨てれば無効になるのではと思った私の考えを見抜いたのか、役人の一人に紙をひょいっと取り上げられた。
｢あの、話ならここで聞きます｣
いくら承諾書という名の紙を見せられたからと言って完全に信用する訳にはいかない。この道の広さなら最悪竹刀で攻撃して逃げればいいかと、背中の竹刀を抱え直した。
「審神者なる者をご存知でしょうか？」
「さにわ…たしか祖母がそのような職業に着いたと聞かされたような…なんか歴史を守る、みたいな」
「はい、おっしゃる通りです！」
「そのさにわ、がなんですか？」
長々と説明をされたが、要約すると私に歴史修正主義者と戦う審神者なる者になってほしいそうだ。
霊力があるものが適正で私の霊力は非常に強く、何がなんでもなってもらいたいのか目の前の政府の人達は必死な顔で説得してくる、が返事は一つに決まってる。
「あー、面倒くさいんで嫌ですね」
基本的に本丸と呼ばれるところで生活をして、余程のことが無い限りこちらに戻れないらしい。
祖母に会えなくなった理由もわかったし、それを知り尚更嫌になった。
話すこともないのでそれじゃあ、と素知らぬ顔で帰ろうとすればガシッと腕を掴まれた。
「ちょ、面倒くさいの一言で片付けないでくださいよ！審神者は人手不足で…本当にお願いします！先程の紙は契約書でもあります！もう契約したのです！沖田さんに拒否権はないんです！ということで…」
カラスが三回鳴くと不吉なことが起こる。
手をかざされ瞼が重くなる中、私は祖母が言っていた迷信を今思い出した。
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作者名：べべ | 作成日時：2020年11月18日 14時
