【d!】拝啓、親愛なる貴女へ【rbr】 (ページ3)

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走った時にズレたのだろうか。ズレた雑面から見える彼のにこやかな笑みはとても幼くて愛らしい。
｢あんさんは人の顔をよお見るなぁ。おもろいん？｣
興味深そうな声色で問うてきた彼。コーラルピンクの瞳が美しく輝いていて、幼さをより引き立たせている。
首を横に振ってみると、彼は首を傾げて｢なんやそれ｣とまた口に手を置いてコロコロと笑った。
その姿も、また美しかった。
妖々たる美しさを持っていながら、幼く、そして愛らしい。
本当に不思議な人だ。
｢せや、あんさんに渡したい物があるんよ。待っといてくれへん？取ってくるわ｣
ゆらゆらと揺れる鈴蘭畑を、彼は切り裂き進んでいく。
その姿を私はずうっと眺めていた。
豆粒にも満たないほど遠く小さくなった彼を見て、少し寂しさを感じた。
いつか、この距離よりもずっとずっと遠く離れなければならない。嗚呼、なんて辛いんだろう。寂しいんだろう。
そんな情を抱えてしまうほど、彼が好きなのかもしれない。
｢はい。これ、あんさんにあげる｣
紫苑の花を1輪、膝をついて差し出してきた。
｢んふふ、綺麗やろ？たまたま見つけたんよ。あんさんに、是非持っといて欲しいと思って。やからそれ、あげる。｣
大切にしてや？と美しく笑って私になげかけた。
礼を述べて有難く頂いた。花は満開で、紫の花弁が儚く、その儚さが愛おしい。
｢気に入ってくれたようで何よりやわ。｣
2人で笑いあっていた。この時間がずうっと続けばいいのに。心からそう願った。
だけど、神さまはそれを許してはくれなかった。