【d!】拝啓、親愛なる貴女へ【rbr】 (ページ2)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:131 hit

▽ ページ2

離してくれないか、と何度も説得しているのだが、彼は呑んでくれない。
なんでや？と不思議そうな顔を浮かべるばかりで、離してもらうことはもう諦めかけていた。

シャラ、シャラ、シャララ

まただ。あの時聞こえた鈴の音と全く同じ。
彼にも聞こえたのか、私を離して辺りをグッと周りを睨みつけていた。
「なんやもう気づかれたんか。」
早すぎる、と彼は不服そうな表情を浮かべていた。
この鈴の音はなんなのか聞いてみたが、「あんさんは知らんでいい」の一点張りだ。
「なぁ、着いてきてくれるか？今ここであんたを手放す訳にはいかへん。」
彼は返事を聞く前に、｢行くで｣と私の手を引いて走り出した。

シャラ、シャラ、シャラ

鈴の音は私達を追ってきた。差が開くどころか詰められる一方だ。音がだんだん大きくなる。

「うるさいなぁ。さっきも言うたけどこいつをここで手放す訳にはいかんのや、はよ諦めてくれ。」
彼はすぐそこにいるであろう鈴に大きな声で言い放った。

シャララララン

鈴の音が突然止んだ。
「やっと諦めたか。ほんま骨が折れるわ」
はぁ、と彼が吐いた深いため息は、空中へと散っていった。
どうやら追うことを諦めてくれたらしい。
「無駄なところで体力使ってしもたな。毎度毎度しつこいねん。」
怒りを含んだ言葉を空へ向かって投げる彼。
縮こまっている彼の姿は、なんだか守ってあげたいほど小さくて。気づいたら隣に座って背を撫でていた。
「ありがとうな。A」