私、すべてを諦めません。

諦めません。０３. ページ8

桜夜side


最悪だ。

何が最悪って、まさかの初戦が。


桜夜「烏野だなんて………」


髪を括りながら、憂鬱な気分で烏野の方を見る。

少しの息苦しさを感じながら、
なんとか平静を保ってノートとシャーペンを持つ。

このノートは、私が梟谷視点で作った烏野のノート。

これに今の情報を書き込んで、対策を練る。

それが、今の私にできること。


赤葦「桜夜」


呼びかけに顔を上げれば、
少し心配そうな表情で顔をのぞき込む京治がいた。

安心させるように微笑みかけ、「大丈夫」と口にする。


桜夜「あ、ほら、早く行って。もう皆集まってる」

赤葦「なんかあったら言ってよ」

桜夜「ふふっ。心配症」


隠すことなく笑って、京治をコートに送り出す。

別に心配することなんてないのに、な。

"他人"としての線引きはした。

これさえ済めば、後のことはどうとにでもなる。

まぁ、病院送りにさえならなければの話だけど。

もう一度、冷静に観察するために烏野を見る。

烏養コーチの言葉に返事をする彼ら。

どこか、雰囲気が違う。

特に日向くんと影山くんが。

何かするのかな。


木兎「目指せ、ノーペナルティ！」


目標高いですね木兎さん。

チームの目標だし、それぐらい当たり前かな。

梟谷は、強いチームだ。

なんせ全国で五本の指に入る木兎さんがいるし。

……………三本の指には入らないけど。

試合開始の笛が鳴り、思考が冷える。

梟谷からのサーブを、西谷君が綺麗にレシーブ。

それは腹立たしいぐらいに綺麗にセッターの頭上に。

あの変人速攻でくるのかな。


木兎「あの変な速攻来るぞ！」


木兎さんの言葉に、
何かひとつでも見落とさないようにあの二人を見続ける。

けれど私の考えは、一瞬で崩されることになる。

影山くんのトスは、短くて攻撃まで繋げられなかった。

それでも。


桜夜「なっ！？」


思わず、小さいながらに驚きの声をあげてしまった。

……………何よ、あの速攻。

あんなトスを、しようとするなんて。

多分梟谷の皆は、
今のがどういうトスなのか解っていない。

あれは打とうとしなければ解らないはずだ。

とくに、今のような未完成の段階では。

まだ未完成にしろ、
影山くんがあのトスを習得しようとしている。

天才の彼なら、きっとできる。

たまらなく怖い。

いや、怖くもあり、楽しみでもある。

どんなふうに、彼らが成長を遂げるのか。


桜夜「鳥肌立つなぁ………」

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