25話 ページ28
雲ひとつない快晴。
そんな空に雲を作るかのように流れていく煙。
煙の流れにつられ見上げれば眩しい太陽の光に目を細める。
明日から雨だというのが嘘かのような空にため息が漏れた。
「ジジくさい顔しちゃって。」
視界に流れるように現れた虎と生意気なガキ。
「何の用だ?A。」
虎から降り重力を無視するかのようにふわっと隣に降り経った珍しいoff姿のA。
「ちびちゃんどうよ。」
「見ての通り。」
背後を親指で指しAの視線をベランダであるこの場から部屋へと流す。
部屋の中では窓にベッタリと張り付いている息子。
「もう視えてんだっけ。」
「お前んとこのが視えてんなら視えてんだろ。」
ふーんと息子のいる部屋に虎を送り込む。
虎の毛をさわさわと遠慮気味に撫で始める息子の姿に小さく笑うA。
そんなAにもう一度同じ質問をする。
「で、何の用だよ。」
「用ないと来ちゃいけないわけー?」
「ガキと遊ぶほど暇じゃねぇよ。」
ヒモのくせにと呆れたような顔で柵によりかかった。
空を見つめるAから視線を目の前の住宅へと移す。
しばらく何も話すことなくお互いぼーとしているとAが口を開いた。
「甚爾、恵のことどうすんの。」
「んだよいきなり。」
「禪院の連中にやんの?」
なぜそんなことを言い出したのか。
視線を変えることなく続ける彼女にため息が出る。
「お前だったらどうする。」
「……私だったら信用できる奴に任せる。」
「じゃあお前にやるよ。」
煙草の火を消し伸びをした。
ずっと同じ体勢でいたからか背中が痛い。
横では特に何も言わないA。
「お前んとこのガキはどうなんだよ。上の奴。」
柵によりかかり彼女とほぼ同じ体勢になる。
虎と戯れる恵を見つめながら口を開く。
「前と比べたらよく笑うようになったし喋るようになった。」
「そうじゃねぇ。」
「特に目立ったことはなし。術式もハッキリとはわからない。」
恵から視線を俺に流す。
「まだ普通の女の子だよ。」
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作者名:はて | 作成日時:2021年10月20日 0時