21話 ページ24
のそりと起き上がり暗い部屋を壁伝いに進む。
廊下の電気をつけトイレに向かう。
「ウッ……エッ……。」
もしかしたら私も。
しばらくトイレに籠る。
30分くらい経っただろうか。
まだ重い身体を動かし脱衣所へ。
嗽等をし気持ち悪い口の中をすっきりさせ少しその場に佇み深呼吸。
もしかしたら私も食べていたのかもしれない。
カニバリズム。
私の脳に異常がないのは元の術式が血詛だからか?
知らぬ間に反転術式を使って脳を修復していたのか?
でも反転術式は上に教わって初めて知った術式。
効果を考えてもそれらしい術式は使ったことがない。
私はなんで生きてる?
しばらくぼーっとしたあと部屋に戻る。
皆を起こさないように自分の布団の上に座った。
そしてまた少しぼーっとする。
すると隣から小さな声が。
「変な夢でも見たか?」
「ごめん、起こした?」
声の主は悟。
静かに出ていったつもりだったのだが起こしてしまったようだ。
気にすんなと起き上がる彼。
「どうした?」
「どうもしないよ。傷が痛かったから見てきただけ。」
本当は違うが言えるわけがない。
もしかしたら人を食べたかもしれないなんて。
言ってしまったら居なくなってしまうかもしれない。
もう隣を歩いてくれることも笑ってくれることも優しくしてくれることも。
全部失うかもしれない。
失った方がいいのか?
こんな風に失いたくないって思うことが間違っているのか?
私は何を。
「A。」
名前を呼ばれ手を引っ張られる。
「なに?」
「昔こうして寝てたろ。」
ほらっと引っ張られるがまま彼の布団に潜った。
久しぶりの彼の匂い。
懐かしくて落ち着く。
「少しは頼れよ。」
「なに急に。」
「頑張りすぎなんだよ。お前は。」
そうかもねっと笑い瞼を閉じた。
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作者名:はて | 作成日時:2021年10月20日 0時