お屋敷大改造プロジェクト閉幕 ページ10
「ハンター、のお屋敷…」
僕は地図を片手に、もう一つの屋敷に向かっていた。同じような造形、すこしだけこちらの方が大きいだろうか。人間(…人間なのか？)のサイズが僕たちより大きいから、それに見合った屋敷の大きさなのかもしれない。
チャイムなんてものは見当たらず、僕はその大きい、きっと分厚いだろう扉を拳でノックした。指先でコンコンコン、と優しくするだけでは意味がないだろうと見込んだからだ。
「あら？お客さんかしら」
「こ、こん、こんばんわっ」
扉を開けてくれたのは蜘蛛——のような造形のハンターだった。中から聞こえる声は女性のもののようで僕の肩は思ったよりも強張る。
「サバイバーさん？迷い込んでしまったの？」
「あ、っいさつに…」
「挨拶…？」
まあとりあえず。と僕は彼女の手で屋敷の中に招き入れられた。サバイバーの屋敷より汚れていて、こんなにいい建物なのにと眉間に皺がよる。もし、僕が僕の設計した建物をこんなふうに扱われたら金を返すから住まないでくれ、引っ越してくれとでも言ってしまいそうな汚れ方だ。
「新しく来た方？」
「このあいだ、来た、ばっかりで…まだ、ほんとに、数回しか試合に出てない…んです」
「それなら見たことないのも納得ね。私はヴィオレッタ。よろしくね、…えっと…」
「あっ、テディ！テディホワイト、です」
「テディさん」
その顔が笑ったのを見て、僕は肩の荷が降りたような気がした。こんな場所に単独で乗り込んで、本当ならば殺されてしまっても文句は言えないのだから彼女が僕が扉を叩く音に気づいてくれてよかった。神の思し召しか、それとも、ただの運命か。
ヴィオレッタが注いでくると言ったお茶を待つ間、随分身長の高いソファに座らせられて僕はドールハウスでもいるような気分になっていた。
「…ああ、君か」
「えっと…あっ、隠者、さん」
杖を持ち、僕に近づいてきたのはいつぞやの試合で出会ったあのハンターだ。二倍くらいあるんじゃないかってくらい身長が高くて僕はソファに座りながら、首が痛くなるくらい見上げた。
「隠者ではあるが…アルヴァ・ロレンツだ。」
「アルヴァ…あっ、僕はテディ・ホワイト、生憎、名刺は持ち合わせていないんですが、建築家をしていて——」
「前に聞いた。君が作っているのはあの、趣味の悪い、妙な建物たちだろう」
「…はい」
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作者名：ちーうし | 作成日時：2024年1月22日 0時
