ろくでなし (ページ9)

今日:3 hit、昨日:12 hit、合計:267 hit

煽るな（アホほど短い！）ページ9

短く息を継いで、時々窓枠を乗り越えた。手汗がひどくて体を支える手がすべりそうになるのを堪えて、赤い信号が点滅する脳内が「早く逃げろ」と語りかけてくる。
何から逃げているのか、わからなくなってきていた。時々壁を設置して離れた場所で息を整えて、また追われる。暗号機の上がる音が明瞭で僕はハンターが近くにいる！と叫び続けるしかなかった。
先に行くよ！と僕は半分怪我した状態でその知らせを聞いた。後ろを振り返って、ハンターに向かっていくと驚いたようにすこし後退りをして、そんなところに板をぶつけ切ってやった。ああ、僕って、こんなこともできるのか！解読に集中して！との僕の声が遠く聞こえてそれに続くようなサイレンの音。
僕の後ろを追いかける目を真っ赤にした彼女は設置できる壁があと2枚あることに気がついているだろうか！
一人ぼっちになったこの場所で、彼女と2人で鬼ごっこをして。いつ死んだっていい、だって、3人逃げ切ったのだから。早く彼女が投降すればいいのにどれだけ僕を殺したいのか、鬼の形相で迫ってくる。
「私、貴方は美しいから好きよ」
解放されたゲートに辿り着くと目の赤い光がなくなった彼女は僕にそう語りかけた。ああ、喋れるんだ。とOKのサインを出すとにっこりと笑ったまま鏡の破片を振り回す。うぎゃ、と変な声を出して僕が奥へ進むと彼女はやっぱり少しつまらなさそうにしていた。

お屋敷大改造プロジェクト閉幕→←前ページ